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今日のラノベ!

シンデレラは探さない。




シンデレラは探さない。

著者:
天道源

イラスト:
佐伯ソラ

レーベル:
講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

 先月できたばかりの、五十階建てのタワーマンション。高校生の俺こと荒木陣は、買い物帰りに、妹の舞と一緒にそれを見上げる。
 おとぎ話に憧れる舞は、そのマンションを、お城みたいと表現した。お城ならお姫様がいるはず。お姫様に会いたい……そうつぶやく舞。でも俺は知っている。お姫様なんて、俺たちには関係のない存在だ。そう思っていた俺だが、世の中は俺が願うほど、単純ではなかった。お城の住人の一人である真堂礼と、俺はふとしたきっかけで出会う。そして俺は知った。俺の前にいる礼は、お姫様ではなく、学園のアイドルでもなく。ただの、可愛い女の子なんだと――。webで人気の青春ストーリー、書下ろしエピソードも加えて待望の書籍化!



感想:★★★★★





人を想う日常とは、おとぎ話のように不思議で色鮮やかなものである
しかしそれはおとぎ話ではなく、たしかな日常でもある







今考えた名言です。

みなさんこんにちは!

第23回スニーカー大賞特別賞受賞作『顔が可愛ければそれで勝ちっ!!』(受賞時タイトル『ググれんあい。』)の斎藤ニコ先生が新作を出されたということで馳せ参じました、デスカイザーです!





今作『シンデレラは探さない。』は、web名義の天道源というPNでカクヨムにて連載されていた同名作品の書籍化になります。(web版リンクはこちら

例によって例の如くwebで作品はほぼ読まない私なので改稿については分かりませんが、書き下ろし部は多いです!
80p!!
それも後日譚というか、映画で言うとEDテーマが流れながら描かれるその後の日常みたいなパートが80pですよ!

綺麗にまとまった物語でありながら、半永久的な「その後」を想像する余地を貰えたのがとてもうれしかったです!!
家族って……いいね……









逆順で感想書いちゃってごめんなさい。
本編の感想書きます。





主人公・荒木陣くんが、熱で寝込んでる妹・舞ちゃんの看病のために学校を休んでいた時のこと。
学校から至急のプリントが配られ、それを家が近かった“シンデレラ” 礼ちゃんが届けに来たところから物語は動き始めます。


第一印象は無表情で気難しい子

でもその翌日に些細な理由を付けて再び荒木家を訪れたあたりから、要するに割とすぐにその印象は崩れていきます。
あえて「変わっていく」とは言わないです。
「崩れていく」です(笑)



まるで好きな人を前にしたかのような可愛い反応をちょこちょこ見せるレイちゃん。
かわいい。
とてもかわいい……!







でもそんな好きになるようなシーン無かったし、チョロインってわけでも無いだろうし……

いや待てよ、そういえば陣くんはやけに忘れっぽいだとかの描写が多い……

どことなく不穏な空気も漂っているし……





そうか、これは陣くんの記憶が飛んでるパターンなんだな(名推理)








と、無駄に覚悟を決めて読んでいましたが、結論から申し上げれば違ったので恥ずかしい……









そんな勘違いをぶっ放したちょっと前のシーンの感想にはなりますが。
「あ、斎藤ニコ先生の面白さが健在だ!」となったのが、63p。
レイちゃんからの謝罪のお礼をするため、陣くんがレイちゃんに話しかけるシーン。



「皆、ごめんなさい。わたし、陣くんと出かけてくるわ」
『よろこんでー!』
なんだよその掛け声……。
本文63pより




このワードセンス、やっぱりすごくないですか??



まず、パッと読んで面白い!

次にじっくり考えてみると、「いってらっしゃい!」ではない所からレイちゃんが陣くんについていくことをレイちゃん以上に喜んでる状況が見えてきます。

それが野次馬的なものなのか友情的なものなのかは分かりませんが、無表情という印象がまだ残っていたレイちゃんのキャラも、ここで更に緩んできます。
少なくともイジられることを許容できる距離感、もしかしたら恋バナもしているのでは?というところまで考えると最早最初の印象はどこへやら。

また、レイちゃんが舞ちゃんのお見舞いに来るという所から始まり荒木家での今後のシーンを想像していたところに、「学校パートも面白いキャラがいそうだぞ??」というイメージを置いていくというおまけもあります。

そして最後に、ツッコミまで込みでやっぱり端的で面白い!









作者買いして良かった!!!










シンデレラ




タイトルにも入っているこの物語のキーワード。
舞踏会の後、ガラスの靴を頼りに王子様がヒロインを迎えに来るというところから、タイトルの「シンデレラは探さない」という状況も見えてきます。

名前の語感だったりその美貌だったりで、シンデレラと称されるレイちゃんの存在はまさしくキーワードそのままではあるんですが……仕込みはそれだけじゃありませんでした!
これのおかげで面白さが一段階上がってるんじゃないかなぁ、と思うくらいには巧妙。
是非読んで「そういうことね!」と唸ってほしい……!



落とされたガラスの靴とは、王子様とは……そゆことなんですよ~~!
んふふ~~~~









まとめ





「シンデレラ」以外にも、この物語の根幹を形成する仕込みとしてラノベの常道的なことも1つありまして。
しっかり読書メモには残していたんですが、ばっちり天道先生があとがきで解説されていたので私からの説明は自粛いたします(笑)
気になる人は……本編を読んだうえであとがきをチェックだ!!!





ということで『シンデレラは探さない。』の感想でした!



掛け合いでのワードセンス、キーワードの出し方、会話で逸るテンポを地の文で落ち着けるタクト捌き、ストーリーのアップダウン……


どれを取っても好きです!!

そしてレイちゃんの可愛さが上乗せされてさらに好き!!




絶対2巻も読みたいです……!



以上!



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今日のラノベ!


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未完結ラブコメと

運命的な運命論

著者:

ゆうびなぎ

イラスト:

つるしまたつみ

レーベル:

講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

「もっと運命的な恋がしたいから」と彼女にフラれた高校生・砂川凍弥。空飛ぶプリンが現れ、恋愛がわからなくなり悩む彼に告げる。「おめでとうリン! キミはラブコメの《主人公》に選ばれたリン!」
 翌朝、凍弥は転校生・百合ケ丘ミリカと曲がり角でぶつかり、キスしてしまう。現実味がないほどに可憐な彼女こそ、異なる世界線から来たラブコメの《ヒロイン》だった。凍弥は指定されたミッションをクリアし、ミリカを"攻略"しなければならない。できなければ、死ぬ!? ご都合主義とラッキースケベを追い風に、命がけのラブコメに挑む凍弥。さらに、もう一人の《ヒロイン》が現れて――。
 これは、"好き"を見失った俺たちが、未完結の"愛"を探す物語。



感想:★★★★★






「好き」って何か、
考えてみる!!!






(帯文句を大声で復唱)





初めての恋人にフラれた直後、謎のプリン型AIを通して《未完結処理班》アンダーテイカーによる未完結ラブコメのヒロインの処理役に選ばれたことを告げられる凍弥。


プリンの存在感が強くてその後が頭に入ってこない部分が無くはないんですが、つまりは現実を舞台にしたラブコメの主人公に選ばれたということですね。あんだすたん。




ただし、


失敗すれば死ぬ




というオマケ付き。
《未完結処理班》の課すミッションをクリアしラブコメを進めることができなければ、凍弥は死んでしまうのです……




しかし、しかし。

プリンによる「ゴリッゴリに定番なハプニング」という助け舟や、失恋前に身につけていた恋愛テクニックでもって割とあっさりクリアしていく凍弥さん。
やり手ですね。
調べて恋愛テクニックが身につくならこちとら苦労してねーですよ。

クッ……




……そんな主人公への黒い感情すらもマルっと収まる良い結末が見れて、大満足です!!







◎ヒロイン達の話。



元カノ、七瀬綾!
物語直前の試験まで入学以降学年1位を取り続けてきた努力型の頭良い子。
そんな彼女が「運命的じゃない」という理由で凍弥をフるなんて…………ねぇ?
ゆうびなぎ先生作品の元カノ枠、私の好みに刺さりすぎでは??



1人目のヒロイン・百合ケ丘ミリカ(表紙の子)は、ドジっ子属性が付加されている転校生。
この世のものとは思えないくらい美少女で、凍弥……というか他人への好感度が根っから高い子だなぁ、と思っていたら……(以下自主規制)
焦った時の「あのそのこの」って口癖が好きでした……!
後半めっきり言わなくなったけど!



2人目のヒロイン・御神楽未来は、凍弥たちの後輩にして4人組アイドルグループ「シュプールガールズ」のメンバー!
「はにゃ」とか「んにゃ」とか、独特な猫言葉が口癖なの可愛いすぎないですか?
可愛いですね!!
キャラづけ抜きにしても、彼女の精神性には尊敬の念を抱きます。





まぁ……



正直、冒頭の凍弥が振られるシーンのショックが強くてミリカ・未来どころではなかったんですけどね……
多分200pくらいまで引きずってましたからね……

「ネットで万全に調べ完璧に実践していた凍弥でさえ、あんな振られ方をするんだ」というショック。
ミリカや未来への対応がまともであればある程、強く冒頭シーンが頭をよぎっていました。


今まで読んできたラブコメ指南ものとも呼べるジャンルの作品からの乖離ですよね、この戸惑いの原因は。

紆余曲折を全て省いてしまえば、指南ものとは「ほら、あんたもこうすれば……少しはかっこいいじゃない」なんですよ。
空回りしたら失敗するけど、教えられたことをやっているうちは失敗しないんですよ、彼らは。
言わば非モテ童貞の目指す星こそが、指南ものの主人公……!!





でも、失敗した……ッ!!


しかもフラれた理由がふんわりしてる……ッ!?




最終的にはこの動揺とか全てひっくるめて「なるほど確かに!!」って頷ける結末だったのでスッキリですが、結末に至るまではビビり倒してましたね……






そんな感じの捉え方をしていたので。
ミリカや未来が「未完結ラブコメのヒロイン」であるならば、凍弥もまた「未完結ラブコメの主人公」として存在しているというような解釈も面白いのかなー、と思ったりします。

お互いに片割れを失った者同士が出会い、奇跡的に嵌れば経過観察、嵌らなければ自壊=死。
片割れ同士を処理してしまうことで、総数に対しての「余分」を口減らしできる。


《未完結処理班》とは根本的に何なのかについては追究されていなかったので、そのあたりはプリンちゃんと合わせて今後の展開に期待したいです!

……ブラックボックスでも良いですけどぉー(未練タラタラな口ぶり)






眠いので一旦閉じます。
起きたら読書メモ他追記します。

ネタバレパート、追記しました!





ひとまず以上!








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜













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今日のラノベ!


素直になれたら廃ゲーマーな妹でもかまってくれますか?


素直になれたら廃ゲーマーな
妹でもかまってくれますか?

著者:
落合祐輔

イラスト:
竹花ノート

レーベル:
講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

「妹のブ、ブ、ブラ持ってニヤニヤしないでよ、へんたい!」
 俺と妹・二美の日常はだいたいいつもこんな感じだ。昔は一緒にゲームしたりと仲も良かったんだが、いわゆる思春期的なころから気まずい関係が続いていた。なかなか解決策もないまま趣味のネトゲに没頭する毎日な俺。それでも、ゲームを通じて学年一の美少女・真木穂乃香と仲良くなれたし、ゲーム内でもライバルギルドのマスターにして超絶ブラコンなヴィオレットをはじめとする、愉快な仲間たちと楽しく過ごせている。それがせめてもの救いか……と思っていたら。ある日、俺はヴィオレットのプレイヤーの正体を知ってしまい……!? 素直になれないポンコツ妹との学園ラブコメ!




感想:★★★★★




ちょっとブログ更新順は入れ替わっちゃいましたが、文庫新作の読了は久々でした!




「メタルビーストハンティング」、通称"メタハン"と呼ばれるVRハンティングアクションゲームの2大トップギルド【バルナクス猟団】と【菫蓮開花】。
それぞれのギルマスと副ギルマスを務める4人、中でもリアル兄妹である兵藤一樹・二美が、ゲームを通した自分たちの関係の再構築をする物語。









メタハンはいいぞ




まず、何よりメタハンが超面白そうなんですよね!!
 


某モンハンの如く機械獣を狩っていくゲームで、あちらよりもギルドシステム・協力プレイを前提としたシステムになっているんですが、まぁ機械獣の動きが男心をくすぐってきます……!


48pで一樹がインフェルノレックスって言うティラノサウルス型機械獣のモーションについて、「演出見たさに何度も直撃を食らっている」って零していて、その気持ち超分かる!!ってなりました。

バララララって放熱フィン展開するとか、向こうが冷却してもこっちが熱くなりますよね!!






PvPも実装されているようで、こちらも対機械獣とはまた違った迫力があって好きです!

あれでしょ?
でっかい敵用の武器とか使えるんでしょ?
それブンブン振り回したり、小回り効く武器も仕込んだりできるんでしょ?

そんなん楽しいに決まっとるやん……







3人のヒロイン




本筋であるヒロインは、王道に至高を重ねがけしたTHE・美少女が3人も!


  1. ゲーム内では曝けだしている超絶ブラコンな本性はリアルではツンドラの陰に。一樹の妹・兵藤二美!


  2. スタイル良し、性格良し、学年一可愛いと皆が口を揃える陽キャであると同時に、一樹と共にメタハンを愛するゲーマー。クラスメイト・真木穂乃香!


  3. おっとり系グラマラス!妹の唯一にして最高の友達!弟持ちで面倒見の良いお姉ちゃん!包容力の化身・高槻裕子!
(文字色=目の色合わせ)



それぞれがメインヒロイン級のスペックを備えているので、3人揃ってるシーンのパワーぢからが凄いです。
ラストの狩りとかね。
お前ほんと一樹爆発しろよ、って思いました。



それまでの兄妹喧嘩を踏まえてのあのプレイングも、他の2人とも意思疎通しちゃってるのも、良いですよね本当……


良いじゃん……メタハンなんだから爆発しようぜ爆発……(過激派)










すとーりぃについて




タイトルと帯でほぼバレてる二美=ギルマスについての話が、本編では100p近くまで引っ張られていることについては、少々引っかかったのが正直なところ。
章分けの山場として使うにはちょっと引っ張りすぎなようにも感じました。


ただ、そのシーンに至るまでをあれ以上加速することは、イコール他の2人のヒロインを蔑ろにすることに繋がり兼ねないのも分かるので……しょうがないのかなぁ……


「正体について我々読者は自明だけど、近すぎて本人は意外なくらい気づかないニヤニヤ」みたいな捉え方をするのもアリです。
アリというか私もそうしよう。
はいそう思いました!







また、そんな兄妹の「きっかけも戦闘もない兄妹喧嘩」については、本当に素晴らしかったです。


二美の語った原因にはヒヤッとしましたね……


それまで一樹視点から見ていた兄妹の生い立ちからは全く想像できなくて、でも確かに言われてみれば二美視点だとそう見えるよね……って納得いくもので。


お兄ちゃん反省して!
でも気持ちは少し分かるから……うん、ほどほどに反省して!









もう1つ。


ネットリテラシー的な意味で、胃が痛くなる展開が続々でした……


決闘中の二美の所業もなかなかだし、一樹の一撃はガチでアウトだし……
みんな、この作品読んで反面教師にしましょう?


あとラストの狩り、ボイチャ戦闘中にリアルネーム呼びガンガンしてるのも不安でしょうがなかったです。

大丈夫?
ちゃんとマイクのON/OFF切り替えてる……?
それとも例のボイスチェンジ機能、あるいは本人の声以外の集音について発展した技術の盛り込まれたマイクイヤホンを使っている……?



気にし過ぎかな……





まとめ



楽しかったです!


メタハンの世界観もキャラも魅力的でした!

私自身はこうしたオンラインゲームがあまり得意じゃないので、紆余曲折を経ながら楽しそうにプレイしてるのが少し羨ましくも……
そういう意味では、幼少時の二美が一樹に抱いていた気持ちを追体験しているとも言えるかもしれません。
ちょっと得した気分♪



せっかく世界観が広がりそうな作品ですし、長く続いてくれたら嬉しいです!








以上!




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今日のラノベ!


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俺はアリスを救わないことに決めた

著者:

清水苺

イラスト:

桜木蓮

レーベル:

講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

 立川誠は、かつて孤独の淵で、悪魔的な魅力を持つ少女に救われ、遊び飽きたおもちゃのように捨てられたことがある――彼女の名は遠越有栖。有栖を必ず見返すと心に誓い奮闘していた誠の前に再び現れた有栖は、吸血鬼のような、淫魔とも言える蠱惑的な笑みを浮かべ囁いた――「また昔みたいに遊びましょうよ」――そんな折、誠は気まぐれで一人の少女、葛城りるを助けた。天使のように純真で奔放なりるは、有栖がもたらした極限の快楽に侵され常軌を逸した行動を始める誠に、自らの愛とからだを擲って救いを与えようとするのだが……最凶なまでに美しい悪魔と純潔だが汚れを恐れない天使の、美しく哀れな子羊を巡る興奮と欲望のダークネスサーガここに開幕!



感想:★★★★★


舞台は東神奈川、みなとみらいあたりだよ!







絶対的な美しさで周囲を惑わし"おもちゃ"を取っかえ引っ替えする有栖。
ぽっちゃり時代に救われ遊ばれ捨てられた有栖へ復讐すべく、美少年として振る舞う誠。
美少女だが本音でしか喋ることができず、周囲との関係を築くことが苦手なりる。




主要な3人が3人とも歪さを抱え、その歪さが依存を生み、徐々に噛み合わなくなっていく様が面白かったです!







誠と有栖の関係だけ見ると『政宗くんのリベンジ』みたいな。
ただ決定的に違うのが歪さ
もっと言ってしまえば"壊れて"いるんですよ、誠が。



有栖やりるも、歪ではあるんです。


年頃の女子高生が、教師にすら手を出させない高貴で蠱惑的な雰囲気を醸し出し、他人を「自分を楽しませるおもちゃ」としか思っていない態度をとる。さすがに普通ではないです。


本音を偽る意味を見出せない。その気持ちもよく分かります。ですが、そこに手を差し伸べてきた男子にいきなり肉体関係を迫るほど惚れるのは到底普通ではないでしょう。



ですが、それすらも誠の前では霞み、物語を引き立てる要素でしかありません。
では誠はどう壊れているのか?








……どう壊れているんでしょうね(まさかの)








悪魔に主導権を奪われ、弄ばれることに愛を見出し。
ただただ有栖を信奉し、崇め、穢し、独占しようとし……




そう、作中冒頭では「鏡の中にいる人のよう」「鏡から飛び出してきた」と表現されていましたが、そこから出てきた有栖を前にした誠は、神を前にした信者に近いのかもしれません。

いや、知らんけども(無神論者)






初めから壊れている主人公が、徐々に壊れ直していく物語。
そして、それを救うヒロインの物語。




この読後感はいろんな人に味わってもらいたいなぁ……
そう、例えば純粋なラブコメが好きな人にこそ。

純水自体は毒じゃなくても、過剰摂取するとナトリウム欠乏症になるぞ?って屁理屈こねて読ませたい1冊。





以上!



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今日のラノベ!

じゅっさいのおよめさん


じゅっさいのおよめさん

著者:
三門鉄狼

イラスト:
ふーみ

レーベル:
講談社ラノベ文庫


【あらすじ】

「わたしはせいじのおよめさん!」
 僕こと倉敷誠二が終業式を終えて家に帰ると、家の前で待っていた十歳くらいの見ず知らずの少女に、いきなりそう言われてしまった。およめさん宣言のもと、一緒に新婚生活を送ろうとしてくる少女。けれどもちろん、ぼくは十歳の少女と結婚することにした憶えはない。このままでは事案コース……そう思いながら少女に話を聞くと、どうやら彼女はクラスメイトの御殿山みのりで、昨日突然その姿になってしまったらしい。僕は幼女化したクラスメイトと新婚生活を送りながら、彼女が失った時間を取り戻すために奔走するが……!?
 これは、僕の人生を変えた、ある夏の新婚生活の思い出の物語――。




感想:★★★★★





いなくなるかと思いきやいなくならないかと思いきやいなくなる小説










じゅっさいのおよめさんとお風呂に入るお話。
もとい、じゅっさいのおよめさんが現れた経緯やら何やらを探ったりする純愛小説。



まずはふーみ先生の美麗な表紙イラストから十分分かっていたことですが、およめさんが可愛かったです!!!!
……あらすじで名前出してるし、いっか。
みのりがとっても可愛かったです!!!


じゅっさい相応の、あるいはもう少し幼いくらいかもしれません。
「わたし、将来○○のおよめさんになるー!」
という無邪気な宣言、本当に可愛いですよね?
あー、いえいえ、決して性的な意味ではないですよ?
一般論的に微笑ましい方向での「可愛い」です。


その微笑ましさはそのままに、体が小さくなる前に得ていた家事スキルを引き継いだリアルおよめさんムーヴのじゅっさい。

天使か?天使か。


スキルがあっても体が追いつかず包丁を叩きつけることになるシーンとか、なんかもうとりあえず頭ナデナデしたくなりますよね!
したく!!!なりますよね!!!!!!


普段は舌っ足らずな感じをうまいこと表現できるオール平仮名で蕩けさせるのに、頑張れば高校時代の話し方もできるというギャップもね、またね、そそられますよね。
あー、いえいえ、決して性的な意味ではないですよ?
クラスでも家でも決して表に出すことのない本能的な部分での思考が表に出てきているということが、そう、そういう部分でのギャップがそそられるということです。








真面目な話



体はじゅっさい、だけど精神的には高校生なみのり。
フィールドワーカーとしてあちこちフラフラし、自由に思うままに生きる槇村さき。
行動に意味を求め、生活に理論や規則性を欲する誠二。

「人それぞれの違い」と「年齢による違い」
2つの「違い」をうまいこと分かりすぎないように混ぜていたのかなぁ、と思います。



こう……生きているとやっぱり、色んな人と出会うじゃないですか。
その中でも合う合わないだとか好き嫌いは当然あると思うんですけど、じゃぁそれが一面から全て判断するかと言えばそうじゃないですよね。
繋がりが深くなればなるほど上下左右前後表裏、ありとあらゆる角度から見ることになって、その度に「この人のこの一面は共感できる」「この人はなぜこう思うのだろう、理解ができない」とかなんとか、その人についての評価が変わっていきます。


その評価の基準となるもののひとつに「自分との誤差」みたいな尺度が多分あって、生活を送っていくうえでその誤差をすり合わせていくことで円滑な人間関係を築いていて。


で、みのりはみのりでそのすり合わせをじゅっさいとして振舞うことであえて放棄し、誠二は誠二でその放棄を受け入れる。
その理由が序盤は「じゅっさいだから」が大勢を占めているんですが、およめさん=みのりと判明してからは「他人だから」という理由の割合が徐々に増えていくようで。


さきさんに関しても年齢不相応なはしゃぎっぷりを見せられる場面もあれば、真面目にみのりについて考察する場面もあって。
でも、みのりを見たあとだとそんなさきさんのギャップを年齢だけで片付けないように見ることになって、それがまた何というか深く読まさせるというか……



可愛さに震えながらも、そんなこと考えてました。はい。
結論はない。






読書メモ





11p:えー
⇒この作品読んだ日、精神的に癒される系のラノベが読みたくてこの本を持っていったんですが、開幕で生死に関わる結末示唆が出てきて「あぁ、これどうしよう……」ってなったラノベブロガーの図。
読み始めるまであと5分。



42p:まえはへいきだった
⇒あらすじ読んでなかったので、「じゅっさいのおよめさん」の正体について推理しながら読んでいたんですよね。
読後にあらすじ読んだら思いっきり正体書いてあってびっくりしました。
中盤に差し掛かるくらいまでは謎のままでしたし、普通に見所になると思うんですけどねぇ……
およめさんがみのりだと知っているかどうかで、序盤の面白さがだいぶ変わる気がします。
正確には面白さの方向が変わります。
正体を推理する面白さか、元JKによるようじょプレイングの面白さか。
つまり編集部的には後者を意図している中、わたしはうっかり前者してしまったわけですね。
得したと見るべきか、損したと見るべきか……



169p:それよ
⇒そうですよね!!!
神社で神に誓って自分でなんとかするなら神からしたら「勝手にしろ」ですよね!!!!
わかる!!!!!!

神頼みした後に良い事が起こっちゃっても自分の運のおかげにするでしょう。
神頼みした後に悪い事が起こっちゃったら神様のせいにするでしょう。

あるいは逆か。
良い事が起こったら神様のおかげ。
悪い事が起こったら自分のせい。

どちらにしろ不毛じゃないですか。
だから私は神頼みしたくないんです。
大学受験の年、初詣から2週間、センター試験3日前にインフルエンザになってから、私はそうやって生きると決めたんです……



203p:さき姉
⇒挿絵が不意打ちボディブローでノックダウン10カウント



239p:みのり
⇒挿絵が素晴らしいんですが、この続きは美少女文庫から出るということで間違いないでしょうか?
え、出ない?
出ないかー、そっかー……(´・_・`)






まとめ





他人を想う気持ちって温かいですね

みのりの行動って冷静に振り返ると狂気じみているんですよ。


一目惚れして、話しかけられなくて。
そんな相手の死の運命を知ったら、迷わず自分の命を差し出して。
余命でやることはそんな相手との新婚生活。


チグハグなようで「好き」というところで一貫している彼女の行動に、温かさを感じます。




ふーみ先生のイラストも可愛くて綺麗で素晴らしくて、もう本当に一冊通して最高でした!






以上!


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