カテゴリ: MF文庫J

今日のラノベ!



西野 2

西野 2
~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~

著者:
ぶんころり

イラスト:
またのんき▼

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は界隈随一の能力者である。青春の尊さに気づいた彼は、文化祭期間を利用して彼女作りに躍起となる。だが、クラスメイトに声を掛ければ振られ、部活動に貢献するも振られ、他校の生徒に声を掛けても振られ、評判は瞬く間に落ちていく。更には文化祭の売上金を巡り窃盗疑惑を掛けられてしまう。だがしかし、隣のクラスの美少女、ローズ・レープマンだけは西野と相変わらず接していた。そこでご近所での恋愛を諦めた彼は、彼女から素敵な異性を紹介してもらおうと策を講じる。ローズの真意と、一連のいじめ騒動の裏側が、白日の下に晒される文化祭騒動の解決巻。




感想:★☆☆☆☆

(まえがき)


激情を叩きつけたような感想になりました。
本来はこのような作品の真意を汲み取らない感想は公開するべきではないのかもしれません。
読まなかったことにすることもできます。
葛藤は少なからずあります。
ですがああいった感想を持った私がここで黙るということは、いじめられている人を見過ごすのと何ら変わりないことだと思うんです。
あるいはいじめられていたあの時に泣いて暴れることしかしなかった自分に戻ってしまうような危機感とでも言うんでしょうか。

なので、そういう意見もあるということを知ってもらうために書き残します。


『西野』という作品への批判的な意見を読みたくない方は、Uターンをお願いします。

以下本編。
















まず、1巻の感想で「受け入れられない面白さ」だと書き残しながらも2巻を買った理由からですね。

ひとえに前巻の物語が中途半端だったからです。
西野=フツメンを際立たせるあの書き方は苦手だけれども、文化祭が終わる頃にはその文章も一周まわって受け入れられるような展開があるのではないかと思ったからです。
サイレント上下巻構成パターンですから。
読まないと損かもしれないと。





で、その結果ですが、やっぱり私はこの作品を受け入れることができなさそうです……。






この作品で各々のキャラがやっていることって、どこをどう切り取っても「いじめ」なんですよね……


相手の容姿や主張が気に食わないから、蔑む・罵る。
相手は誹謗中傷に慣れているから、どれだけ言っても構わない。
自分のほうが「強い」のだから、「弱い」人に何をしても良い。
自分は常識を持っているのだから、その常識に従わない人はどうなっても自業自得。
やられた分はやり返しても構わない。


これらの認識を寄せ集めたものが『西野』という作品であると、私は2巻まで読んで思いました。
もしかしたらこれらの認識を覆すギミックがあったのかもしれませんが、私にはそれを認知することができませんでした。
仮にそのようなギミックがあっても、あるいは3巻以降でクラスメイトが改心するようなエピソードがあるにせよ、いじめの現場が過去のものである以上もう手遅れなんですけどね。
言った時点でアウトです。









ちょっと強い口調になってしまうのが情けなくも心苦しいところですが、端的にまとめると感想はこうです。






世間で騒がれているものに比べて軽いとはいえ過去にいじめられていた身として、
また、同時に無意識にいじめていたかもしれないという悔いを持っている身として、
この作品が「娯楽小説」として世に出ていることに強い怒りを覚えます。


「小説の出来として凄い」とか、
「今までにない着眼点」とか、
「西野本人がどう思っている」とかは関係なく、
「いじめ」を第三者視点で見ることを「娯楽」にしていることが許せません。













以上!



今日のラノベ!



君死にたもう流星群

君死にたもう流星群

著者:
松山剛

イラスト:
珈琲貴族

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

二〇二二年十二月十一日。それは僕が決して忘れられぬ日。その日、軌道上の全ての人工衛星が落下し、大気圏で光の粒となり消えていった。『世界一美しいテロ』と呼ばれたこの現象にはたった一人、犠牲者がいて…!引きこもりの少女・天野河星乃を救うため、高校生の平野大地は運命に抗う。「まさか読み終わる頃に自分が泣いているなんて考えもしませんでした」「切なさ、絶望、一縷の望みと試行錯誤の日々、さわりだけ読むはずが先が気になってもう止まりませんでした」「この作品を読んで僕も夢を諦めたくなくなりました」発売前から多くの人を感動に巻き込んだ『宇宙』と『夢』がテーマの感動巨編スタート!




感想:★★★★★




この作品を読んで、夢を諦めたくないと思える人間でありたかった……






スペースベイビーという特異な生い立ち、両親は日本を代表する宇宙飛行士、天才的な頭脳、秀でた容姿。
そして、人間不信の元引きこもりにして、宇宙飛行士で、「世界一美しいテロ」の唯一の犠牲者。
それがヒロインの天野河星乃。

星乃の発明したスペースライターで過去へと飛んだ主人公・大地が、運命を変えようと足掻くなかで自分の生き方や「夢」の在り方について考えていくお話。




私は、率直に言えばだいぶモヤモヤしながら読みました。
大地の掲げる「コスパ至上主義」とも言うべき考え方が幼稚すぎて見ていられないんですもん……



本当にコスパ良く勉強するのなら、適度に手を抜くわけがありません。
テストや入試の際にする勉強時間が増えるだけですもん。
ただの先延ばし、あるいはその先その学習内容を一切使わずに生きることに賭けているだけです。
あれは楽をするための理由のためにコスパという文字列を使っているだけです。

適度に手を抜く勉強をしてコスパが良くなる条件があるとすれば、それは「学校ではやらない範囲の学習を将来のためにしなければならない」場合などごく限られた条件のみのはずなんです。
つまり、大地がもっとも苦手とする「叶えたい夢をもつ」ことが必要になります。




なので、恐らくそれらを全て理解したうえで「大地くんには夢が足りない」と助言している星乃が狂おしく好きです!!
頭で理論は組みあがっているのに説明が言葉足らずなせいで大地にその真意が伝わっていないのがいかにも天才っぽいです。

しかしその星乃は既に……
過去に飛び、つまずきながらも星乃を取り戻し二度と離さないために大地がこれからどんなアクションを起こしていくのか、星乃の真意が伝わるのか。
非常に続きが楽しみです!







話は変わりますが。
「夢は99%叶わない」という大地のセリフや一連の流れを見て「夢をあきらめずに頑張ろう」と思える人が、やっぱり多数派になるんでしょうか?

私は「中途半端だなコイツ」って思ってしまったんです。
あれだけ夢をもつことのバカらしさを語っておきながら、夢の叶う可能性を1%も見積もっているとか信じられないです。

一パーセントよりも低いかも

本文209pより


かもじゃないです。絶対低いです。
一パーセントよりも低い確率から、努力で掴み取るのが夢なんです。
努力を捨てた人間が夢を叶えられる確率なんて、0パーセントに決まってるじゃないですか。




なので、恐らくそれら全てを理解したうえで「A(才能)×C(努力)=P(夢の実現可能性)」という方程式を提示した星乃が狂おしく好きです!!!
何なんだこの子は!!もう!!!!好き!!!





とはいえ。
結局私も考え方の根本は大地と同じなんですよね。

夢の持ち方が分からないです。
「夢」という大それたタイトルを付けてまで、そして努力を重ねてまで何かを成し遂げたいと思ったことが……記憶の限りで無いんですよね……(「目標」くらいならありますが)。
なので、大地の考える方向はすごくよく分かります。
上述したもやもやは、突き詰めれば同族嫌悪なのかもしれません。

だからこそ、星乃や伊万里のような夢を持って頑張ろうとしている人たちって凄いと思います。
だからこそ、大地が夢を持ってくれることを期待せずにはいられません。





以下、読書メモにて候。



読書メモ





タイトル:君死にたもう流星群
⇒与謝野晶子「君死にたまふなかれ」をモチーフにしたタイトルですね。
「流星群」を「ながれぼし」って読みたくなるのは私だけですか?
「きみしにたもうながれぼし」って。



90p:君の夢は。
⇒前前前世から星乃を探しそうだなぁ、とか思いながら必死に時間軸を割り出そうと考えてました。
後で思いっきり「2017年」って書かれていたんですがね!



125p:分からぬ。
⇒過去に飛ぶため大地が使った、星乃発明の「スペースライター」の原理が一応説明されていますが……理解が追いつきませんでした!
超光速で網膜データ飛ばして時間を超えるというくらいの理解で……良いですか?良いですね!



156p:こいつ……
⇒このシーンを皮切りに未来知識をマシンガンの如く放っていく大地に、最初「こいつバカか?」と思っていましたが、スペースライターの副作用的に記憶の定着に問題あるのが原因だからしょうがないみたいですね。
……そういう理解でよろしいのでしょうか?(原理が分かってないからフワッとする)



250p:ヤマ当て
⇒大地、既に幾度もスペースライトしていた説。
過去の記憶が無かったのは……ほら、副作用的なサムシングですよ。




まとめ




読む前にチェックしていた事前企画やTwitterでの感想は大絶賛の嵐でした。
私の感想は、正直そういった感想とは温度差があると思います。

ただ、面白くないというわけではありません。
むしろ、とても面白いです!
それぞれの登場キャラが抱える悩みや夢がどうなっていくのかというミクロな視点と、星乃の運命を変えることができるのかというマクロな視点。
2つの視点から運命が絡み合った状態で、大地が未来をどう変えていくのかとても楽しみです!



……星乃の死の運命を変えるだけだったら、手っ取り早い方法があるにはあるんですけどね。
7巻くらいまで引っ張ってならその方法でのエンディングも見てみたいですね……
相当に闇が深い。





以上!


今日のラノベ!



心理学で異世界ハーレム建国記

心理学で異世界ハーレム建国記

著者:
ゆうきゆう

イラスト:
Blue_Gk

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

女の子が大好きなのに女性恐怖症(兼コミュ障)でまともに会話もできない不遇な高校生男子・難波心太。ひょんなことから異世界へ飛ばされてしまった彼が目覚めたとき、持っていたのは一冊の心理学書だった。食事も寝る間も惜しんで隅から隅まで熟読した心太は、心理学知識一つでこの世界を生き抜くことを誓うが―?これは、能力やスキルを授かることなく、もちろんお金も地位も何もない少年が、その身と心理学だけでいつの間にか成り上がっていく物語。平凡で無力な少年が、たった一つの力で次々と少女たちを落としていき、やがて王となってしまうかもしれない、新規格の恋愛攻略ハーレムファンタジー、ここに開幕!





感想:★★★☆☆




読めば身につく44箇条!





『マンガで分かる心療内科』の原作の方で、現役の精神科医、二重に「先生」なゆうきゆう先生の作品です。

エセメンタルクリニックの被験者第一号として異世界に飛ばされた主人公・心太が、医師から授けられた心理学書で学んだ心理学知識を活用しながら、エルフの村に代々伝わる秘宝「エルフのブラ」を取り戻すべく大冒険する物語!



あらすじからしてツッコミどころしかないんですが、安心してください。
本編はもっとツッコミどころしかないです!
例えば登場キャラ。



秘宝「エルフのブラ」と取り戻しエルフの国の再建を志すエルフ。
禁忌魔法で蜜を集め花粉をバラまくフェアリー。
婚活に勤しむために川に遡上してきたマーメイド。
下着への憧れから下着を盗む魔法を会得した女盗賊。





キャラが濃い……!
ひたすらに濃い……!

なのに心理学に関しては真面目!
ひたすらに真面目……!



3章以降の章末に、その章で出てきた心理学用語・知識に関する解説が平均3~4ページほど掲載。
本文中では心太が「会話の中での使用例」を見せてくれているので、ユーモアに富んだ解説と合わせて割とすんなり頭に入ってきます。
……「今すぐひとつ思い出せ」と言われたら「国連ダンス」くらいしか出てきませんが。




軽快すぎるくらいの文章と、少し堅い心理学知識。
その2つがうまい具合に合わさってバランスがよく取れていたと思います。
読みやすくて面白かったです!!




ただ、「3.5章」など「○.5章」の形で挿入されていたヒロイン目線の小話がやや蛇足だったかなぁ、と思いました。
例えばこれ。

普通にあいづちを打ってくれて、そして『わかる』って共感してもらえるだけで、何だかついつい『いい人だ』とか『信じられる人だ』って思えてきちゃうんですよね……

本文88~89pより



エルの独白シーンなのですが、その直前の心理学解説において「受容による親近効果」や「共感の大切さ」といった項目で述べられている効果を、エル自信が自覚するような書き方になっています。
心理学のテクニックを用いた側が意識するのは当然ですが、用いられた側が、しかも心理学というものの存在を直前まで知らなかった人がここまで綺麗に言い当てるかのように書かれていることに違和感がありました。
「昔から自分に同意してくれる人を信じやすい」という文脈になるにせよ、もう少し違った言い回しになっているはずです。
殺人事件のトリックを知っている人がうっかりその情報を零してしまうが如く、この文章は心理学を知っている人がうっかりそれを前提に書いてしまったかのような印象です。


……多分「心理学知識を使われた側がどう感じるか」と「ヒロイン目線で魔法のような話術を使う心太がどう見えるか」の二点を意図して入れられたのが「○.5章」の存在理由で、後者については良いシーンだということは付け加えておきます。





あと、裏表紙で「心理学ラノベの原典にして最高作」を謳ってますが、少なくとも「原典」に関して言えば『サ法使いの師匠ちゃん』という前例があるということをですね……。
もっとも、あちらが「心理学ラノベ」というよりは「心理学を利用した詐欺ラノベ」なのであまり強く言えないというところもありますが……テヘッ





読書メモ




80p:「止める権利はない
⇒エルって、置かれている環境がどうしようもなくカオスなだけで、思考性だけで行ったらこの作品で一番まともな子なんですよね……。
それがよく現れていた一文だと思います。



90p:「以前修学旅行で行ったイギリスの田舎町に似たのどかな風景
⇒はい、1番deskyzer!ラノベの王女様のモノマネします!






この主人公、文化資本高いわね!!




まずは自己紹介からはじめよう。
僕の名前は難波心太。高校三年生だ。
見た目も中身もぜんぶ普通な僕には、他の人とは決定的に違うところが一つある。




なにが普通よ!

高校か中学か、はたまた小学校なのかは知ったことじゃないけど、
修学旅行でイギリスの田舎町に行く学校に通う奴が普通なわけないじゃない!!
医者っていう文化資本最上位層であることをカミングアウトしての刊行とはいえ、このサラッと「修学旅行と言えば海外です」って出してくる感じが気に食わないわ!




……口調は真似ましたが本心です。
東南アジアくらいなら地元の私立高校でも聞いたことありますがイギリスて……
相当良い学校ですよね……普通て……


92p:カチャヌチャポリリントルルエンシャンソン
⇒その文字列はどこからおいでなすったんですか(笑)?



123p:解説
⇒穿った見方はやめなきゃなぁ……と思いつつ。
エルに精神科医の魂が宿ったかのように、たまに急に饒舌に語りだすのでそこだけ文章が浮いちゃってるような気がします。
流れ的にその文章に含まれてる意味は必要なのだけれど、その言い回しだと……というもどかしさ。






まとめ




書店に並べるならば、ラノベコーナーというよりは「マンガでわかる」系の隣かなぁ、というのが総評です。
ある意味「さすが」ですね。
面白くて、同時に学べる作品です。

建国の行方も気になりますし、次巻の発売に期待しても……良いんでしょうか?
プロローグで「その後」を先に書いているので、多分出るとは思いますが……。




以上!


今日のラノベ!



西野


西野
~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~

著者:
ぶんころり

イラスト:
またのんき▼

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)





感想:★★★★☆



学校では良くも悪くも目立たないフツメン、裏の世界では知らない人のいない暗殺者。
それが西野である



詳細不明の異能を用い最短で最速に依頼をこなすがフツメン。
それが西野である



青春の思い出を作るべく文化祭の準備にかこつけて女子に話しかけたらいじめを受ける程度のフツメン。
それが西野である



学年一の美少女に話しかけられるだけで周りがザワつく影の薄さ。
それが西野である



薄暗いバーでクールにお酒を嗜み悪態をつくも、顔面偏差値的に締まらない。
それが西野である






西野という存在が大体どういう人物なのか、それは理解できました。
表紙買いしたその動機は「西野とは何者……」というものだったので、そういう意味では期待通りに面白かったと言えます。






ただ、妙に残る読後のモヤモヤ感。
これは書き残さねばと必死に考えていましたが、とりあえず2本柱に絞れました。




1つ目は、物語の進まなさ。


人間関係は(主にマイナス方向に)進んでいますしフラグもどんどん立てられているんですが、そのフラグをほぼ回収しないままの終了となったため、不完全燃焼感がすごいです。
これはタイトルに(上)とか(1)とかが付いていたらまだ緩和されていたかもしれません。
もっとも「緩和」であって「撤回」ではありませんが……。

序盤のローザの奇行が後半になると見る影もなかったのが物凄く気になっていますし、文化祭はどうなるんだろうとか、西野意外の異能は?とか、フランシスカの出番とか、他にも大小様々なポイントが残されていて……。
逆にこの巻で何か達成感のある物語進行があったかと言うと、マフィア相手の大立ち回りくらいでしょうか……?
停滞している訳ではないのであまり強く言えないんですが、それにしても進まない……。


裏を返して言えば、あまり進まなくても面白いと思えるだけの魅力が西野とその周囲にあるということでもあります。
まぁ、だからこそ★4評価にしつつ気になる所を主軸に感想書かせていただいているんですが。





2つ目は、いじめっ子目線に見えること。


これはもうアレルギー反応みたいなものなのでしょうがないんですが……。



西野=フツメン、スクールカースト最下位

という図式こそ今作の最大の軸で、最大の武器です。
当然それを盛り立てるために、西野がいかにフツメンであるのかを懇切丁寧い説き、西野の行動がいかに容姿に合わず分不相応なことをしているかがじっくり描かれています。
例えば58p。


そんな至って普通のフツメン。どこにでもいるフツメン。
現代日本における顔面的マジョリティ。
だからこそ、こうした非日常では、その面白さが際立つ。
本来、フツメンでは挑めない領域。
特にローズのような美少女が並び立つと、彼の存在はまるで冗談のようだ。たとえ金属で作られた本物の拳銃であっても、彼が手にした途端、プラスチック製の模型に成り代わってしまったのではないかと錯覚するほどの、圧倒的フツメン。

   本文58pより


未だかつて、これほどフツメンについて詳らかに語られた文章があったでしょうか?
本来語られず埋もれる存在であるフツメンに対してこれだけ情熱的な文章を捧げていることこそ、ぶんころり先生の凄さの現れでしょう。
それは間違いないんです。



ただ……
変なあだ名とかちょっとした外見的特徴とか、そういうので弄られたりいじめられたりしたことがあってメンタルがあまり強くない人が読むには毒が強いというだけなんです。


途中までは全く気にならず、それこそ上で引用した文章についても肯定的な読書メモを残すくらいだったんですが……。
クラス内で西野へのいじめが始まってからですね、気になり始めたのは。
西野自身は良くない空気を感じつつも強く生きているので暗い雰囲気にはなっていないですが、結局いじめはいじめで、西野が金や天然でそれを躱しているだけで何も解決していないんですよね……。

特にラストエピソードがきつくて……。
身の丈に合わないスーツを選ばせた竹内君と、どうせ払えないだろうと適当な金額を提示したスーツオブスーツさん、不遜な発言の数々を店員にかけたらしい西野自身。
そして、「西野の顔でこの決めポーズで高級スーツ、万事手を尽くしてこの出来ですw」と言わんばかりの本編ラストの挿絵。
登場人物の発言から構成に至るまで全てが地獄。
そこまで言うかと思うかもしれませんが、そこまで言います。
何より、あの挿絵を見て一瞬でもクスッとした自分が許せなくて精神的に参ってます……



でも物語としては面白いんですよね……
…………ただやっぱりその面白さの原点は「西野がフツメンであることをバカにする」ことにある気がして、個人的には受け入れられない面白さですね……。
でも続きは読むんだろうなぁ……





読書メモ




24p:青ナンバー
⇒外務省から発行される外交官専用車のナンバーが青色なんですね!
ひとつ賢くなりました!
今度からニュースで注視してみます。
……えっ、これ常識?



92p:これが西野
⇒今までの余裕綽々な態度からなんとなくの想像はしていましたが、返り血も浴びず、表情も変えず、切断した生首を無感情で歩いて持ってくるまでの存在なことは想像以上でした……。
93pのローズの驚く顔が可愛い。



144p:細かく言えば……
⇒繰り返しての説明が多かったですね。
web発ということですから、ネット掲載時の章を挟み時間を空けての更新を考慮した文章の名残ですね。
いわゆる「またなろうかよ」って言う方たちは、異世界だのチートだのに文句つける前にこの文章リピート問題を槍玉にあげるべきだと思います。



155p:盲点
⇒机にイタズラされたら、机ごと入れ替えてしまえば良い。
これは盲点でした……




まとめ



「すべてのフツメンへ贈る」と帯で謳われていますが、とんでもないです。
外見や微妙な特徴で(世間的に見れば)軽いいじめを受けた経験があり、今もその傷が癒えきってないフツメンの方にはオススメしません。


個人差はあると思いますが、TVバラエティー番組「スカっとジャパン」を楽しめる人には楽しめますし、あれを見てイライラする人は向いていないと思います。




作品自体の質はとても高いです。
それだけは間違いないので、末尾ですが改めて強調させていただきます。






以上!


今日のラノベ!


絶対彼女作らせるガール

絶対彼女作らせるガール!

著者:
まほろ勇太

イラスト:
あやみ

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

この学園には必勝の女神がいる―。白星絵馬の手のひらに願い事を書くと叶う、そんなジンクスといつも笑顔な人柄で学園でも人気のクラスの太陽・絵馬を尻目に、目立たず冴えない自称幽霊の大地は生徒会室へ。憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務のためだ。が、ある日大地が偶然絵馬の「とある秘密」に触れたことで、絵馬が大地の恋愛を全力応援すると宣言!さらに絵馬を信奉する学園トップ美少女の猪熊みりあと鷹見エレナまで巻き込んで大地のモテ改革を開始!!大地の学園生活は瞬く間に一変していき―!?第13回新人賞“優秀賞”の正統派青春ラブコメ、爽快に登場!




感想:★★★☆☆




MF文庫Jの新人賞にて優秀賞を受賞し、好きラノ2017下期で1位を獲得した注目作!
文章の質は文句なしに高いですが、それゆえに疑問符を浮かべた部分もあり何とも評価しづらいところ。



まず面白かった点。

1つは「憧れの先輩を振り向かせる」という目標がブレないシンプルなストーリー!
王道中の王道。
もはや使い古されたと言っても過言では無いとすら思える題材。
しかしだからこそ、「2017年のライトノベル」という潮流においては目立ったのでしょう。
1巻から複数のヒロインを出す、サービスシーンも作る、主人公はイマイチ煮え切らない態度、etc…。
これらが最早当たり前のように繰り返されている中、それらの大筋を踏襲しつつも「主人公(男)が一途である」というただ一点で勝負し、見事成立させていることが凄い。
私もいつもなら「エレナ様に足を置いていただきたい!」とか叫んでいたかもしれないですが、今作ではどうしても生徒会長という絶対的な最終ヒロインの存在に目を奪われてしまいます。
悔しいくらいに術中にはまってしまって、故に面白い。


もう1つは豆知識要素!
豆知識というか、がっつり学習として楽しめる情報量でした。
今回取り上げられていたのは、猪熊ちゃんが教えてくれる「ファッションについて」と、エレナ様が教えてくれる「円滑コミュニケーション術」の2つ。
どちらもですね、知っているんですよ。半分くらいは。
情報源はTVだったと記憶しているので、世間的には「常識」の範疇かもしれないところが半分。
「ファッションの流行は意図的に作られている」とかですね。
そして、もう半分が初耳学。
「服は機械による自動縫製ではない」とかです。

全く知らないジャンル・情報についてドヤ顔で披露されても「……(ふーん…)」くらいなものですが、既に少しでも知っている事についての新情報となると「……へぇー!!」くらいまでリアクションが変わるもの(だと思っています)。
常識とトリビアの比率をうまく考えて、興味を最大限惹かれるような情報量に。
それを意図的にやったのであろう文章・展開が、個人的には今作最もツボです!






さて、問題は冒頭で申し上げた「それゆえに疑問符を浮かべた」という点です。

この主人公くん、女の子の容姿をそれはもう細やかな点まで美しい例えをいくつも重ねて褒めちぎるんですよ……。
その描写で女の子の魅力はバッチリ伝わるんですが、如何せん事細かすぎるのだよ……。

ぶっちゃけ一言で言えば、読むのが辛かったです。
上で挙げた良いポイントが、それなりに読み進めてから把握できる類のものだっただけ余計に。
クラスメイトにすら名前を把握されず、特に目立った特技もなく、成績が優秀というわけでもなく、コミュニケーションがうまいというわけでもない人間が、普段からボーッとクラスを眺めているという経験のみであれだけの比喩を重ねて女の子を褒めちぎることができるなら、さっさとその気持ちを行動に移してほしい。
その観察能力がありながら、好きな先輩の違和感に気づけない?そんなことは無かろうて。

まぁ、この点に関してはこの作品に限った話でも無いですし、逆に淡白すぎる描写というのも困るので難しいところなのですが。
難しいところだからといって評価外にするわけでもないので、正直に★-2させていただきます……。

いや、本当に。
特に中盤以降この作品の面白さが分かってからは、面白さを求める気持ちと「……でもあの描写量が待っているんでしょう?」という気持ちの葛藤で、「どうしよう……どうしよう!」って読む手が止まりましたから。






残りはいつもの読書メモで!




読書メモ





12p:絵馬……えま……エマ……
⇒朝30pくらい読んでから出勤して、感想と今後の展開を考えながら仕事していたんですがね?
手越くんあたりが「おまえはわるい女」とか歌いそう、とか思ってしまったせいで仕事の手が止まりました(実話)



17p:修飾の嵐
⇒上に書いたとおり、女の子の容姿をこれでもかというくらい美しく描写していて、本当に描写だけは素晴らしいんですよ……!
その描写をしている主人公のキャラとの整合性に疑問を持ってしまう僕が悪いんですっ!
この描写を踏まえて「僕は至って平凡」とか言い出さなかったのは僥倖。



38p:「死」キーワード確定
⇒作中「女神スイッチ」として機能する、絵馬に対してのタブーワード「死にたい」。
明るい展開で騙した後に暗い展開にズドーンと持っていくタイプだと確信していましたが、そこまで深くズドーンと行かなかったのは精神衛生上は良かったです。
予測可能回避不可能な大きさの落とし穴に自ら突っ込んでいくのは楽しいですね!



42p:良い事言うのが早い!
⇒主人公くんに対して絵馬が語る言葉。とても良い。
辛い時、悲しい時の気持ちを的確に、されど重くなりすぎないように纏めてくれていて、「この子になら自分の悩みを相談したい」と素直に思える天使みがあります。
40pちょっとしか経ってないのに早くもクライマックス感あるシーンで、ここでコレ来るならラストはどんな良いシーンが……!とその後への期待値がグンと高まったシーンです。



81p:お前実はおしゃれできるやろ……!
⇒こうね、制服姿の猪熊ちゃんとかエレナ様の外見を描写するのはまだ分かるんですよ。まだ。
でもですよ?
「小さなリボンのあしらわれた繊細な白」とか服の感想込みで外見を描写されてしまうと、もう何も同感できなくなって……。



113~118p:瞬間火力
⇒このシーンの後、それまで読み渋っていたのが嘘のように気がついたら1冊読み終えていました。
それくらい火力あるシーン、「笑顔」。

主人公くんが初めて自分の意思を強く前面に出したことで今後の青春に期待が持て、それと同時に猪熊ちゃんやエレナ様がタダの絵馬の取り巻きに留まらない良キャラだということを知らしめられました。



188p:普通に考えたら父の部屋
⇒しかし、そんなことは無かった



207p:……デジャブ
「はは、さすがに無理だと思うな」

クラスの空気に一石を投じ、その一言が何故か教室に響き、クラスに馴染むきっかけになる。
読んでて本当にびっくりして鳥肌立ったんですが、「無理」という言葉も含め、これ僕が高校入学1日目にやらかしたのと同じなんですよ……!
会話の内容はもちろん違いますが(確か全校集会中にこのクラスのメンバーで黙ることができるかどうかとかそんな話)。

ろくに会話したことも無い、クラスという枠組みの中の不特定多数の人に否定の言葉を突きつける。
l怖いですよ。
失敗なんてしようもんなら……。
僕のは反射的に「いや、無理だろ」って出ちゃったのが良い方向に転がってくれただけなのでアレですが、コミュニケーション手段として、吟味した上で、自分の意思でこの一言からコミュニケーションをスタートしたというのはとても凄くて、感動すら覚えます。
いやぁ……、本当にびっくりしました。




まとめ





実は高校のクラスメイトが書いているとかそんなオチは……(無い)



終わってみればプロローグ。
それぞれのキャラが全く別々の方向に向けていた矢印が、主人公くんに向き始め、これからどんなラブコメが繰り広げられるのか期待に胸高まります!

絵馬の「女神スイッチ」、一瞬見せたその狂気の面が2巻でがっつり描写されることを期待しているのは僕だけかもしれませんが、それはともかくとして「人間は様々な側面を持ち、それぞれに信念を持ちながら生きている」ということを深く感じさせる良い物語だったと思います。
2巻でも彼女作らせるガール“たち”の、面白くも至極真面目なラブコメを見せてくれることを期待します!



……そして、最後まで主人公くんの名前を書くことは無かったのであった。


以上!



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