今日のラノベ!
果たして本当に努力と筋トレでチートを凌駕する物語だったのだろうか?
ネット上で「キンキンキンキンキンキンキンキン」という戦闘音はどうなんだーw、みたいなので悪い意味で話題になってしまった作品。
真相を確かめるべく読んでみました。
結論から言うと、その点はほぼ問題なかったかと。
そもそも件のページは「スキルを獲得して調子に乗っている奴を、主人公がこれまでの努力の結果ですげなくあしらう」というシーン。
呆気なければ呆気ないほどスキルと努力の対比が生まれるので、最大限まで簡素に描いたあのシーンはむしろ賛辞を送ってもいいかと。
……問題があるとすれば、10歳のアレルの地の文が全く10歳じゃないことですよ。
むしろそっちが気になってしょうがなかったですし、あの10歳に見えない地の文が「キンキン……」を無意味に幼稚に見させている部分はあったかと思います。
例の効果音は伏線にもなっていました。
というのも、書き下ろし短編での母との対峙では「ズガガガガガガガガガガガッ」という打ち合いの効果音が出てきます。
もちろん10歳のアレルには到底できなかったであろう打ち合いで、最上位のスキルを持つ母に努力で追いついたことを意味していて。
こんなこと言うとラノベ読みとしての品格が疑われるかもしれませんが、剣の動きとか体捌きを事細かに書かれても頭の中で全く再生できない人なので、個人的にはむしろこのくらい勢いだけで書かれていたほうが読みやすかったりします。
一般的な表現からは間違いなく外れたものだと思いますが、その真意を汲み取ろうともせず嘲笑するのはいただけないですよね、というのが今回の件の私のスタンスです。
(当然、汲み取ろうとした上でそれでもやっぱりおかしいという意見はあって然るべきです)
で、その件はその件としてあまりにも都合の良すぎる“努力”への信頼と、帯やあらすじで「スキル」を「チート」と言い換えているのが気に食わなかったりします。
いや、ね?
異世界の話ですから、私たち人類と根本的に体のつくりが違ってもおかしくないですけど、それにしたってたかだか5年(スキル得る前の基礎期間を含めても10年ほど)の努力で最上級職の技を身に付けることができるのは、やりすぎじゃないかな?と思うわけです。
例えばこの世界のスキルが「憶える」ではなく「引き出す」という性質のものであれば、そうしたことも可能なのかもしれません。
しかし、やはりそれにしては同じように「見よう見まねで」できたという前例が無さすぎるんです。
アレルよりもガタイの良い奴はゴロゴロ居るのに。
……そもそもガタイの良い奴って生まれつき筋肉ダルマなわけがなく、その人たちも筋トレはしてるんです。
その過程でスキルの1つ2つは再現できていないと、主人公が努力だけでスキルを模倣したという前提自体が成り立たなくなってしまいます。
となると「無職」というスキルに特異性があると見るのが一番合理的なのかもしれません。
「無職」スキルを手にしたものの中でアレルのような努力を積み重ねたものが多くいるとは考えづらく、また上級職の親を持ち貴族としての外聞もないという条件なら前例ゼロでも違和感はあまりありません。
つまり、「無職」=無能という固定観念が間違っていて、「無職」=才能の塊が故に1つの職に固定されてない、という認識こそが正しいのかもしれないという説が濃厚になってくるのかなぁ、と思います。
ここまで考えて最初に戻りますが、この結論にしろ提示された条件だけにしろ、やっぱり「努力」だけで最上級職に迫ったというには些か無理がありすぎるのではと思います。
そう思いながらアレルの態度を見ていると、自分の努力に対する無限の自信と、努力が身を結ばない周囲への異常なまでに見下す視線に腹が立ってくる部分があり……。
特にライナなんて努力しているのにアレルのような伸び代を得られない典型的な例で、そんな彼女があしらわれているのを見ていると「何か違うんだよなー……」と感じざるを得ませんでした。
「職業」や「スキル」を「チート」と言い張る件に関しては、「スキルとチートは別ですよね?(全ギレ)」以上に言うことがないです(全ギレ)
読書メモ
11p:達観
⇒正直冒頭2ページ目のこのシーンで挫けそうになりました。
10歳の話し言葉じゃないですよぅ……
159p:やる前から不可能と断ずる
⇒不可能と断じて良いのは実際にやってみて、やりつくして、それでも無理だった時だけだというのがこの作品の最大のテーマです。
だから余計に反対意見を述べづらかったというのが、今回の感想の最大の難所でした。
固定観念に囚われているのではなく、理論的に考えて納得できないということを提示しなければこの作品を読んだことになりませんから。
……まぁ、どう足掻いたところで「実際にやった」わけではないので、「そういう設定です」と言われたら詰みなんですが。
やけにキャラの濃い姉がモブキャラなことに驚きを隠せない読後。
剣の道をほぼ極めたアレルは、次は魔動王の父に習い魔法を習得しそうな感じですね。
あの世界の魔法についてはまだそこまで深く触れられていませんでしたが、努力でどうにかなるものなんでしょうか……?
いえ、この「魔法は才能」という固定観念もまた振り払わなければならないのでしょう。
どんな努力を重ね、どんな結果を導くのか。
楽しみにしたいです。
以上!
著者: | イラスト: | レーベル: |
---|---|---|
【あらすじ】 10歳で授けられる「職業」と「スキルの有無」が人生を左右する世界―― 最強の両親をもつ少年アレルは、あろうことか「無職」の烙印を押されてしまう。 「才能がなければ努力すればいいじゃない」 努力に努力を重ね、驚異的な剣の技能を身につけていくアレル。 やがて15歳になったアレルは、剣の頂点に立つべく剣の都市ブレスギアへ向かうが…… ストイックなまでの努力と筋トレでチートを凌駕する新感覚! |
感想:★★★☆☆
果たして本当に努力と筋トレでチートを凌駕する物語だったのだろうか?
ネット上で「キンキンキンキンキンキンキンキン」という戦闘音はどうなんだーw、みたいなので悪い意味で話題になってしまった作品。
真相を確かめるべく読んでみました。
結論から言うと、その点はほぼ問題なかったかと。
そもそも件のページは「スキルを獲得して調子に乗っている奴を、主人公がこれまでの努力の結果ですげなくあしらう」というシーン。
呆気なければ呆気ないほどスキルと努力の対比が生まれるので、最大限まで簡素に描いたあのシーンはむしろ賛辞を送ってもいいかと。
……問題があるとすれば、10歳のアレルの地の文が全く10歳じゃないことですよ。
むしろそっちが気になってしょうがなかったですし、あの10歳に見えない地の文が「キンキン……」を無意味に幼稚に見させている部分はあったかと思います。
例の効果音は伏線にもなっていました。
というのも、書き下ろし短編での母との対峙では「ズガガガガガガガガガガガッ」という打ち合いの効果音が出てきます。
もちろん10歳のアレルには到底できなかったであろう打ち合いで、最上位のスキルを持つ母に努力で追いついたことを意味していて。
こんなこと言うとラノベ読みとしての品格が疑われるかもしれませんが、剣の動きとか体捌きを事細かに書かれても頭の中で全く再生できない人なので、個人的にはむしろこのくらい勢いだけで書かれていたほうが読みやすかったりします。
一般的な表現からは間違いなく外れたものだと思いますが、その真意を汲み取ろうともせず嘲笑するのはいただけないですよね、というのが今回の件の私のスタンスです。
(当然、汲み取ろうとした上でそれでもやっぱりおかしいという意見はあって然るべきです)
で、その件はその件としてあまりにも都合の良すぎる“努力”への信頼と、帯やあらすじで「スキル」を「チート」と言い換えているのが気に食わなかったりします。
いや、ね?
異世界の話ですから、私たち人類と根本的に体のつくりが違ってもおかしくないですけど、それにしたってたかだか5年(スキル得る前の基礎期間を含めても10年ほど)の努力で最上級職の技を身に付けることができるのは、やりすぎじゃないかな?と思うわけです。
例えばこの世界のスキルが「憶える」ではなく「引き出す」という性質のものであれば、そうしたことも可能なのかもしれません。
しかし、やはりそれにしては同じように「見よう見まねで」できたという前例が無さすぎるんです。
アレルよりもガタイの良い奴はゴロゴロ居るのに。
……そもそもガタイの良い奴って生まれつき筋肉ダルマなわけがなく、その人たちも筋トレはしてるんです。
その過程でスキルの1つ2つは再現できていないと、主人公が努力だけでスキルを模倣したという前提自体が成り立たなくなってしまいます。
となると「無職」というスキルに特異性があると見るのが一番合理的なのかもしれません。
「無職」スキルを手にしたものの中でアレルのような努力を積み重ねたものが多くいるとは考えづらく、また上級職の親を持ち貴族としての外聞もないという条件なら前例ゼロでも違和感はあまりありません。
つまり、「無職」=無能という固定観念が間違っていて、「無職」=才能の塊が故に1つの職に固定されてない、という認識こそが正しいのかもしれないという説が濃厚になってくるのかなぁ、と思います。
ここまで考えて最初に戻りますが、この結論にしろ提示された条件だけにしろ、やっぱり「努力」だけで最上級職に迫ったというには些か無理がありすぎるのではと思います。
そう思いながらアレルの態度を見ていると、自分の努力に対する無限の自信と、努力が身を結ばない周囲への異常なまでに見下す視線に腹が立ってくる部分があり……。
特にライナなんて努力しているのにアレルのような伸び代を得られない典型的な例で、そんな彼女があしらわれているのを見ていると「何か違うんだよなー……」と感じざるを得ませんでした。
「職業」や「スキル」を「チート」と言い張る件に関しては、「スキルとチートは別ですよね?(全ギレ)」以上に言うことがないです(全ギレ)
読書メモ
11p:達観
⇒正直冒頭2ページ目のこのシーンで挫けそうになりました。
「だって騒いだって仕方ないだろう」
俺は少々うんざりしながら主張する。
「どんな職業か選べるわけじゃない。ただ受け入れることしかできないんだからな」
10歳の話し言葉じゃないですよぅ……
159p:やる前から不可能と断ずる
⇒不可能と断じて良いのは実際にやってみて、やりつくして、それでも無理だった時だけだというのがこの作品の最大のテーマです。
だから余計に反対意見を述べづらかったというのが、今回の感想の最大の難所でした。
固定観念に囚われているのではなく、理論的に考えて納得できないということを提示しなければこの作品を読んだことになりませんから。
……まぁ、どう足掻いたところで「実際にやった」わけではないので、「そういう設定です」と言われたら詰みなんですが。
まとめ
やけにキャラの濃い姉がモブキャラなことに驚きを隠せない読後。
剣の道をほぼ極めたアレルは、次は魔動王の父に習い魔法を習得しそうな感じですね。
あの世界の魔法についてはまだそこまで深く触れられていませんでしたが、努力でどうにかなるものなんでしょうか……?
いえ、この「魔法は才能」という固定観念もまた振り払わなければならないのでしょう。
どんな努力を重ね、どんな結果を導くのか。
楽しみにしたいです。
以上!