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今日のラノベ!


異世界居酒屋のぶ 二杯目

異世界居酒屋のぶ 二杯目

著者:
蝉川夏哉

イラスト:

レーベル:
宝島社


【あらすじ】

ある日から店が異世界にある古都と繋がってしまった居酒屋「のぶ」。訪れるお客たちは寡黙な店主、ノブ・タイショーと給仕のシノブが振る舞う酒や料理が好きになり、たちまち古都では「のぶ」が受け入れられていった。そして迎えた秋。にわかに街の人々の間で不穏な“魔女”の噂が広まりはじめていた。さらに、魔女の噂を聞き付けた大司教まで古都に来訪して…。人と人の縁を結ぶ小さな居酒屋の物語。「小説家になろう」から生まれた異色グルメ小説第二弾!




感想:★★★★★




常連から初来店まで、庶民から王侯貴族まで。
今巻も幅広いお客様で賑わう「居酒屋のぶ」の、心温まる様々なエピソードが詰め込まれていました!



今回のテーマは「淡い好意」といったところでしょうか


『女傭兵』では、リオンティーヌという東王国(オイリア)出身の女騎士が、かつて戦場で見えたとある騎士を探して古都に来るのですが……
運命のイタズラとはかくも面白く、残酷なもの。
つい、そう思ってしまうようなお話です。
ダシのように胸に沁みるんですよこれがまた……



『古都の秋刀魚』では、水運ギルド<鳥娘の舟歌>のギルドマスター・エレオノーラが「のぶ」で秋刀魚を食べていたら、近くで呑んでいたニコラウスが……?なお話。
大人な恋の始まりの予感……?な トゥンク 案件です。
混ぜご飯に喩えるなら、どっちが秋刀魚でどっちをコメにするか。それが問題だ。



『秋の味覚の天ぷら』では、吟遊詩人を目指す青年・アルヌが「のぶ」で天ぷらを食べたことで、自分の目指す場所を「料理と美酒」を歌うクローヴィンケルという詩人に定めます。
アルヌはこの巻の最重要人物と言っても過言ではないキャラなんですが、家業か吟遊詩人かの間で定まらず、ついにはアルヌの詩を読んだクローヴィンケル本人にまで指摘されてしまう始末。
(テーマにこじつけてるようかもしれませんが)『秋の味覚の天ぷら』時点でのアルヌにとって、家業とは尊敬する先代のように完璧にこなさなければならないものという強迫観念があったんだと思います。
だから、「好き」だけどそこに未熟な自分が入ることで踏み躙りたくない、というのを無意識に思い吟遊詩人の道に逃げていたのかなぁ、と。
その逃げは消極的ではあるけれど、なんだかんだ「古都を知る」という点においては家業に役立つものでもあったので決して無駄にはならないんじゃないかと思います。
頑張れアルヌ!


上の3篇以外にも恋愛、親愛、友愛、もちろん食やお酒も含めて、色んな形の好意が「のぶ」で生まれ、伝播していく様が描かれています。




それらの良さを引き立てているのは、暗に示す事柄(回収されないフラグ)の多さかもしれません。
回収されないフラグという語弊があるでしょうか……。
んー……。
回収された事に気づかないフラグ、というほうがいいですかね……。
『ナスのあげびだし』でのトマスとエトヴィンの会話なんかが良い例です。
最後の最後まで読んだ後にこのシーンを読むと「あぁ、そういう!」ってなるんですが、回収のタイミングではなかなか気づけないんです……!
他にも大なり小なり細かい仕掛けが散りばめられているんで、パラっと読み返すのが楽しいです。

そして、それらのフラグがまるでカレーに入れたチョコのように影に隠れて周りを引き立てているんですよ!(これが言いたかった)
3巻はもうちょっと注意深く読みたいと思ってはいますが、料理の美味しそうな空気に負けてちょろっとしたフラグが頭から抜け落ちるんですよね、きっと……。

それもまた魅力。かも?




読書メモ




18p:いつもの
⇒素人考えだと「いつもの」という注文はお店側にとって「いつものでスタッフが分かるほど通ってくれるお客様」という、絶好の好材料だと思っていました。
しかし、本当のプロは……やっぱり違いますね。
「いつもの」は体の良い停滞とも取れることを認識して、常に新しいものを提供できるよう考えているんですね……。素晴らしい……!



69p:ラインホルトは出来る子
⇒タコは食えるけど、ラインホルトは食えない奴



79p:レモン
⇒ベルトホルトさんの奥さんにして「のぶ」の給仕・ヘルミーナさんが、旦那さんの皿の絞った後のレモンをひょいパクするシーン。
レモン……
酸っぱいもの……
……いや、まさかね?



120p:ナスぅー
⇒ナスのあげびたしは、一人暮らしの時に常備菜としてよく作っていました。
作り置きなのでお酢を多めにしてましたが、やっぱり作りたてのあげびたしは良いですよ本当に……。
美味しそうに食べるトマスを見て、久々に食べたくなりましたー



137p:この一体感
⇒あの広さの居酒屋だから生まれるこの一体感。
「のぶ」がファミレスだったらこうはならない。



143p:おおおおぉぉぉぉぉ!!
⇒79pの自分が凄い



171p:アルヌの居た理由
⇒酔拳使いのアルヌが、毎日、昼間から「のぶ」に入り浸っていた理由。
なーるほどぉ?
彼が只者じゃないというのを察したシーンでもあり、113pのフラグを思い出すきっかけになったシーンでもあり。



189p:だし巻き玉子
⇒料理人の最初の一歩にして究極の一歩がだし巻き玉子
みたいな風潮ありますよね、すごいわかります。
だってあれめっちゃ奥が深いって、素人の私でも思いますもん。
味、形、火入れの時間、食感、触感、色合い、香り、etc……



198p:茶碗蒸し
⇒これもまたフラグ回収がアナウンスされないパターンでしたね……
「私はそのフラグ、認知しておるぞ!」って万能感やばいです



239p:チビ
⇒同上。難易度はこちらのほうが下。



**:イカ二貫
⇒イカと「のぶ」を掛けた結果のメモですね。
メモのクセがすごい




まとめ




古都の片隅にある居酒屋に、近隣の王侯貴族が味を求めてやってくる。
考えるまでもなく途轍もないことです。

現代日本の味が古都には珍しく先進的ということもありますが、「つい足が向いてしまうお店」を作っているのは何より信之さんとしのぶちゃんあってのものです。

このまま帝国と近隣諸国との微妙な軋轢も「のぶ」の魅力でどうにかしちゃえ!




以上!



今日のラノベ!


異世界駅舎の喫茶店 小さな魔女と記憶のタルト

異世界駅舎の喫茶店 

小さな魔女と記憶のタルト

著者:
Swind

イラスト:
pon-marsh

レーベル:
宝島社


【あらすじ】

異世界にある鉄道の終着駅、ハーパータウン駅の名物は喫茶店『ツバメ』。ここでしか食べられない絶品料理を求めて今日も駅舎は大繁盛、マスターのタクミと看板娘のニャーチは大忙し。このお店の料理の魅力は、美味しいだけじゃない。『ツバメ』の料理は、大切な思い出と繋がっているのです。仲良しな掃除屋の二人組が、故郷の味を巡って「赤いスープ」と「透明なスープ」で大喧嘩!?国の本部からハーパータウン駅に派遣されてきたちょっと生意気な新人は、おばあちゃんが作るサツマイモとカボチャの料理が苦手な様子。収穫祭でニャーチが出会った身寄りのない幼い少女は、お母さんが昔作ってくれた大切な記憶の味があるようで…。今日も『ツバメ』は、新しい出会いと大切な思い出を作ります。




感想:★★★★★



今回もほっこり幸せ気分です♫



今回はズバリ「愛」がテーマでしょうか!
……って意気揚々と書くつもりが思いっきりあとがきでSwind先生自ら仰られていて、合ってて嬉しいやら恥ずかしいやら。
折角なのでちょーっと逸らして「パートナー」という面で切り取ってみましょう!


まずは何といってもタクミとニャーチ
タクミだけだと静かになりすぎるところをニャーチが適度に引っ掻き回し、ニャーチだけだと収集がつかなくなるところをタクミが以心伝心で収める。
あちらの世界とこちらの世界ではニャーチの姿も人格もまるで違うという話ですが、それが信じられないほどお互いを知り尽くしている感があって、まさに理想の夫婦っ!って感じです!
背中つかまれてうにゃ~~~ってなってるの最高に可愛いです。



リベルトとソフィアのふたりも良いですよねー。
今はまだ仕事の大事なパートナーですが、ここから先は……?
リベルトの着実な攻め手に対してソフィアはまだ真意に気づいていない様子ですが、当初「私にも選ぶ権利が~」と言っていたのに比べたら相当軟化しているように思います。
リベルトが彼の最大の武器である「紳士的な態度」を捨てた時こそ、ソフィアの心が陥落するときじゃないでしょうか?
サンドイッチを食べたいと目を輝かせていた時の新しいもの好きな一面は、ソフィアの貪欲な好奇心との相性が抜群ですからね!



仕事でのパートナーと言えばもう1組、ロランドとフィデルも外せませんね!
お互いに「相手には負けたくない!」と思っていて、なおかつ「あいつはすごい奴」だと尊敬し合っていて。
常に憎まれ口を叩いているのに、どちらかが真剣な空気になったらすぐにそれを察知できるほどお互いをよく分かっている親友。
新キャラ・ルナちゃんの無垢な仲裁がなければ絶対にお互い認めませんが、喧嘩するほど何とやら。
異世界料理を自力で発明してしまうふたりの力が、今後どんな展開を迎えるのかすごく楽しみです。
……リベルトとの面識もあるわけですし?(期待)



個人と個人という枠組みからは外れますが、お店の人とお客様というのもお互い大事なパートナー。
どんな向き合い方が正解かは場所や職、そしてお客様一人一人によって違うもの。
タクミをはじめとするこの作品の大人たちは、皆お客様への対応が理想的でとても参考になります。
やっぱり言葉づかいとか「気づき」の頻度なのかなぁ……。
新人駅員として今回登場したテオは、周りと比べると劣って見えてしまいますが普通はこんなものだと思います。
まだまだポカを無くすには程遠い彼ですが、一歩一歩成長して、お客様の良きパートナーとなる日を心待ちにしたいです。



他にもまだまだパートナーとして取り上げたい組み合わせはありますが、キリがないので一旦この辺で。
以下読書メモ。





読書メモ




26p:ヴルスト+麺=?

  鉄板ナポリタンが来ないんじゃ!!


ヴルストの入っていないトマト風味のナポリタンは出てきましたが……やはり完全体を作れるまで提供しないという拘りなのでしょうかっ!?
カルボナーラは出てくるのに鉄板ナポリタンが出てこないっていうのは、タクミの拘りじゃなかったら何者かの陰謀しかないですね。
ある意味この作品で一番心待ちにしているかもしれないです。鉄板ナポリタン。

名古屋生まれの「素材屋」という居酒屋でつまみとして食べて以来、鉄板ナポリタンにだだハマリしているラノベブロガーことdeskyzerでした。
締めましたが続きます。



30p:壺、蓋、藁
⇒“壺”に入れた氷を溶かさないようにしていた“蓋”が“藁”ということにほほぅ、となったので。
調べてみたら、冬場湖に張った氷なんかを藁やおがくずで包んで洞窟などで保存するということが昔から行われていたようで、これはその応用みたいなものみたいですね。
気化熱で周囲より温度が低くなる……?理科は分かりません!

タクミの言っていた冷蔵箱・氷式冷蔵庫についてもついでに。
1803年にアメリカのトマス・ムーアにより発明され、日本でも明治以降氷による食物の冷蔵保管が普及していったそう。
冷たい空気は下に、暖かい空気は上に、というくらいの理科ならdeskyzerにも分かりますo(・`∀´・)
ちなみに日本での人口製氷の始まりは福沢諭吉の熱病に対応するべく、福井藩主・松平春嶽侯の元にあった製氷機を借り受け諭吉の塾生が作ったものが最初なのだそうです。
今作1巻でも夏風邪のお客様に氷を出している描写がありましたねー!

冷蔵箱は、いわゆる三種の神器としての電気式冷蔵庫が登場する昭和30年頃まで、つまり今から60年ほど前までは用いられていたというのだから驚きです。
やっぱり幕末から現在までの文明発展スピードはおかしいですよ……。




41p:アガール
⇒海藻から出来ていてゼラチン質といえば寒天かな?
と思って調べてみたら大当たりだったので、嬉しかったです(小学生並みの感想)



46p:ピーニャ
⇒『GATE 自衛隊彼の地にて斯く戦えり』のピニャ殿下の名前の由来がピニャコラーダであることは何となく察していましたが、その「ピニャ」が何を指すのかまでは……調べなかったですよねー。
お酒は好きですがカクテルを呑むようなシャレオツな場所にあまり行かないので(そもそも好きなお酒が焼酎と日本酒って時点で……ねぇ?)、呑んだこともなかったわけです。

なるほど、パイナポーでしたか

どうでもいいですが、今手元にあるのはストロングゼロのまるごとアセロラ味です



47p:ヘラティーナ
⇒これは全く見当つかなかったんですが、なるほどゼリーでしたか。

今巻はタクミが向こうの世界に馴染んできたからか、あるいはタクミがこちらの世界の食べ物に例えるのにも限界があったのか分かりませんが、食材ルビなしが幾つかありました。
それを予想して調べて一喜一憂するという新たな楽しみがあって、面白かったです!



102p:朝ごはん
⇒揚げ鯖のトルティーヤ、かき揚げ、アクアパッツァ……
漁師一家の朝ごはんは、一般人には重すぎます……
でもたまにはこういう朝ごはんも食べてみたいですね!
体調を万全に整えた上で、その日1日の体調をリリースする覚悟で。



5章:好き
⇒『小さな魔女と記憶のタルト』のサブタイトルストーリーですね。
普段温厚な駅長やタクミが本気で怒り、持てる力を全て使ってルナを救おうと動く様子は見習いたいものです。
そういう状況が起きないことがもちろんベストですが、そういう状況に直面してしまった時に見て見ぬふりをしないというのはなかなかに難しいことです。
ちょうど最近話題になっている常磐線車内での出産に関しても、妊婦さんへの的外れな批判、メディアや居合わせた心無い乗客による撮影・取材への批判とマイナス方向ばかりに加速していきますが、何より私たち外野が言うべきは「出産を手助けした、たまたま居合わせた方への賛辞」だと思うんですが、違うでしょうか?

声を出せずに助けを求める人に気づき寄り添う勇気。
このお話ではそれをニャーチが自然に成しています。
タルトを食べてルナが涙するシーンも感動しましたが、それ以上に「最初の一声」を躊躇わなかったニャーチに最大限の賛辞を送りたいです。
そして同時に自分もかくありたいと思いました。
(自分が助けられない人に手を差し伸べかけ、糠喜びさせてしまう場合もあるというのは重々承知の上で)

大人によって苦しい世界に置かれたルナが、大人の尽力で優しい世界に帰ってきたこと。
マンサナの甘酸っぱい味わい。
ストーリーも、そこから得る教訓も、料理も含めてこの章は大好きです。



161p:寝起き
⇒ニャーチの寝起き芸は卑怯だと思います!
どう転んでも可愛いじゃないですかこんなの!!

ごちそうさまです





まとめ




仕事仲間としてロランドやテオがいて、さらには家族としてルナまで来て。
あちらの世界の一員として過ごすしかない……とまでは言いませんが、「ある程度」以上の責任を持たなければならなくなったことで、タクミの考えはひとつ前向きになったようです。
それがあちらの世界にどんな革命を起こしていくのか。
ソフィアやリベルトはますます忙しくなっていくでしょうし、テオやロランドの他にも従業員が増えていくかもしれません。
ソフィアが何回かこぼしていた支店計画も、例えば人手不足が解消されたらロランドが任されちゃったりするかもしれませんし。
食材の開発、保存・調理技術の発明によりあちらとこちらの食文化がどんどん融合していくのを見ていると「次はどんな料理が出るんだろう!」とワクワクします。
鉄板ナポリタンはよ!

出来ることなら末永くこの少し変わった異世界生活を見守りたいものです。







以上!


参考文献
・Wikipedia「冷蔵箱」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E8%94%B5%E7%AE%B1

・探検コム「製氷・冷凍・冷蔵庫の歴史」
http://www.tanken.com/reizo.html




今日のラノベ!

異世界駅舎の喫茶店

異世界駅舎の喫茶店

著者:
Swind

イラスト:
pon-marsh

レーベル:
宝島社


【あらすじ】

タクミは電車で眠っていたはずだった。しかし、目覚めるとそこは、蒸気機関車が牽引するクラシックな列車の中。車窓には田園風景が広がり、隣にいたはずの妻は、猫耳の少女・ニャーチになっていた。終着駅で出会った駅長から、異なる世界が交わる現象“時線の転轍”に巻き込まれたのだと告げられた二人。途方に暮れる二人を見かねた駅長の計らいにより、タクミとニャーチは終着駅・ハーパータウンで、喫茶店『ツバメ』を営むことになったのだった。駅を乗り過ごしてしまった少女とまかないのハンバーグ。常連の老人とモーニングサービス。新聞売りの少年は特製サンドイッチを仕入れに来て、目利きの女性銀行家が予約したのは「あっと驚くような」メニュー。駅には毎日、いろんな出会いがやってくる。




感想:★★★★★



むねはいっぱいに、おなかはぺこぺこに。



ひょんなことから異世界に迷い込んでしまった新婚夫婦(妻は猫耳少女化)が営む駅ナカ喫茶店を舞台にした物語。
駅という立地を活かした設定と、喫茶店ものならではの落ち着いた雰囲気が調和してとても穏やかな気持ちで読めました。




まず何よりも料理が美味しい!
……うん、美味しそうとかじゃないよね、絶対美味しいもん。
タクミやその弟子ロランドの主観でどんな調理をしているのか辿るので、調理の音とか見た目とかから想像を掻き立てられて。
初めて見る料理を前にしたお客様の主観で、その料理がどんな見た目・香り・味なのかを丁寧にレポートしてくれて。
もう本当にお前ら評論家にでもなれよ!ってくらい繊細な味の違いまで語ってくれやがるのでうらやま死ですようらやま死!
俺にもそのランチ食わせろぉぉぉぉおおおおおあああああああ!!!






タクミとニャーチが迷い込んだ世界はこちらの世界の150年ほど前の文明と同じくらい、蒸気機関は実用化されているが電気は未発達なくらいの文明。
しかしそこに加わるひとつの制限。




そう、小麦が無いのである。




正確には存在はするものの、ひどく高価なものという位置づけ。
名古屋生まれの作者+喫茶店ものということもあり、異世界名古屋めしという新しいジャンルが爆誕することを密かに期待していましたが、よくよく考えると鉄板ナポリタンが完封されているという。
マイスブレッド使った小倉トーストなら……あれ?美味しそう?

この小麦が無いという制限と、冷蔵庫が無いという文明的制限のせいでタクミは四苦八苦。
そこで無いものをどう代替していくのか、どんな文明を“仕入れて”お客様に喜んでもらうか。
いやぁ、異世界モノの良さがうまく引き出されています。




そして喫茶店に訪れる様々な人たち。
普通のお客様はもちろん、食材や器材を納品してくれる業者さん・農家さん、事情がありそうな人、間違えて来ちゃった人、高貴な方、etc…。
「喫茶店を目的に来た人」と「駅の利用を目的に来た人」が入り混じっているのが面白かったですね。
他の喫茶店モノだと、ここまで入り混じることはあまり無いですからねー。

お客様へのアプローチ方法が増えて忙しいにも関わらずタクミの接客は充実していて、とてもタメになります。
おめでたを察したり、駆け落ちを察したり、文章を読んでいたらそこそこ分かりますが、いざ自分がタクミの身になった時にそれに気づけるかと言われると自信はありません……。
普段からの落ち着きようも含めて、タクミさん本当に尊敬します!




では残りの感想は読書メモと共に。
ここからが本番!



読書メモ





目次
⇒まさに喫茶店のメニュー!というデザインで素敵です!
こういうさり気ない遊び心が没入感に関わってくるんですよ……!



9p:時線の転轍
⇒鉄道が線路を変える時の、何か隣りの線路にウネッってなってるやつを転轍機って言うんですが、線路を世界戦に見立てて別の世界線に迷い込むことを転轍と表現したこの発想に脱帽。
「あ、この作品面白いぞ!絶対面白いぞ!」って確信したのはこの言葉が始まりですね。




41p:笑顔
⇒美味しいものを食べたら笑顔になるし、
それを見た作った人も笑顔になるし、
それを見守っている我々も笑顔になる。

ので、ここ読んでいる時に電車の中でニヤニヤしてしまったのは万物不変の真理による不可抗力である(Q.E.D.)




53p:夫婦
⇒寝起きのやり取りの尊さで白くなりそう!
ニャーチは転轍前の記憶がおぼろげにしかなく(231p)、人格は完全に別になっているらしいですが、それでも二人の会話や意思伝達を見ていると愛し合っているんだなぁ、というのが伝わってきます。



59p:商売の基本は誠実さ
⇒見ている人はちゃんと見ているんですよ。
真面目に、真摯にお客様に向き合う姿を見せられて、自分にそれを手助けする手札が生まれたとしたら手伝いたくなるじゃないですか。
相手への親切は巡り巡って自分に戻ってくるもの。
それを意識しすぎるのもまた良くありませんが、目先だけに囚われない価値の生み出し方みたいなものをこのシーンから感じ取った……ような気がします。




146p:国力の発展
⇒これも↑に通じるものがありますね。
軍需産業が人々の生活を豊かにしてきたことは歴史を紐解けば明らかですが、それだけが国力を上げる術ではない!というのをいち早く気づいたグスタフさん。
国の力とは民草の力。
雑草は踏んでも起き上がるが、肥料をまけば凄いことになる。
……なんか言いたかったことと違う…。



151p:駆け落ちだー!ヒュー!
⇒男女二人の登場シーンで全てを察してとりあえずメモで煽ってみたけど、このあとの展開的に非常に申し訳ないというか、自分の至らなさを痛感するばかりであります。はい。



166p:三
⇒何かを続けようとするとき、三のつくタイミングで変化を求めたくなるというタクミの言葉。
今のところ色々とすぐ辞めることに定評のある人生を送っているのであまり当てはまるタイミングは無いんですが、記憶が正しければブログ開設から3年目にタイトルが変わり、さらに3年後にブログの引越しをしていますね。
……えっ、このブログ、内容の紆余曲折とかあるけど存在自体はもう6年……?



192p:都市名、由来ある…?
⇒さぁ、どうでしょう!!(全投げ)
後でじっくり考えてみます。
ついでにですが、食材は確認した限りでは全てスペイン語っぽいです。
トマトはトマトでしたが。
多分発音が「トマト」と「トマテ」の間なんですよ……表記はtomate



223p:氷みつ
⇒かき氷にシロップの元ってあるんだ!
っていうマジもんのメモです。



225p:レモンの作用
⇒ゼリー状のジャムが溶ける!へぇ~…!
っていうマジもんのメモです。



228p:荷物を受け取る
⇒お客様の荷物を自然と受け取り先導するタクミを見て、ふとコンビニのタバコの年齢確認でどうたらこうたらしていた件を思い出しました。
なぜそれが出てきたのかは分からない、ということにしておきますが二言だけ。
客とスタッフは、どちらかが傲慢になった時点でその関係性が破綻するようにできているのかもしれません。
スタッフの面目を立たせるというのも客のステータスなのでしょう。



241p:あっ、もう1年以上……
⇒思っていた以上に時間経過が早くてびっくりしました。
この後のエピソードで「異世界に来てから3回目のニャーチの誕生日を祝う」という話があってさらにびっくり。
料理は一日にして為らず。
ロランドの成長が伏線だった……!



286p:シグナル
⇒発熱に痛みが伴うのは比較的良いシグナルなんですって!!
っていうマジもんのメモです。

……役立てようにもここ何年かは、明らかに風邪ひいてるのに熱が出なくて長引くんですよね(遠い目)
ウイルス性胃腸炎の時くらいですよ……高熱出たの……。



305p:はい、特定班出番ですよ!
⇒世界遺産、桜の老木、展望席のある特急列車とこれだけヒントがあったら特定できそうなので、後で挑戦してみます。
姫路城とか、京都とか、奈良とか、岐阜とか、意外と候補は多い……。



308p:ニャーチ!
⇒ニャーチって猫耳少女化する前からのあだ名だったのかよっっっっ!!!!!!!

この本で唯一声出してツッコミ入れたシーンになります。



311p:コンポタライス
⇒要するにとうもろこしがたくさん降りかかった米ですもんね?
想像上は美味しいです。想像上は。
今度試してみましょう!Twitterにあげます!

耐熱皿にコンポタライス敷いて、その上にちぎったマイスブレッドあるいは食パン、粉末コンソメ、薄切りにしたセボーリャ、仕上げにケッソを軽くかけてトースターで180℃4分くらいしたら更に美味しそう。




322p:パエリア
⇒異世界にもパエリアは存在するのか……。
さすがのスペインっぽさ。
……スペインの風土について調べたら、気付かなかった小ネタに気づけるかも…?
…………となるとスペインはカツオの漁獲量がそこそこあったりするのかな?




まとめ





美味しい料理が出てくるラノベは、それだけでお酒のおつまみになるのでとても良いですね!
妄想の料理に舌鼓を打ち、心温まるエピソードに胸を打たれ。

そうですね……。
次巻以降への期待としては……何といっても鉄板ナポリタンの登場が待たれます!



今回も長々と失礼致しました!
これでも当初予定よりは短くまとめたんですけどね!読書メモが膨大でして(^_^;)

以上!



どもー。
デスカイザーです。


とある記事でラノベの売上数を見たんですけど、ヒーロー文庫の作品数、売上数が多くて正直びっくりしました。
他レーベルが苦戦するなか、それだけ人気作をバンバン出しているという現実を見ると、もしかしたらレーベルの勢力図も変わってくるのでは?という気がしてきますね。



それじゃ、今日のラノベ!

異世界居酒屋「のぶ」

異世界居酒屋「のぶ」

著者:
蝉川夏哉

イラスト:

レーベル:
宝島社


【あらすじ】

異世界に繋がった居酒屋「のぶ」を訪れるのは、怠け者の衛兵たち、お忍びの聖職者、水運ギルドのマスターなど個性的な面々ばかり。彼らは、寡黙な店主、ノブ・タイショーが振る舞う驚くほど美味い酒や、未体験の料理に驚き、舌鼓を打ちながら、つかの間、日々のわずらわしさを忘れるのだ。この居酒屋の噂は客から客へと広がり、連日様々なお客がやってくる。さて今夜、居酒屋「のぶ」にはどんなお客が訪れ、どんな物語が紡がれるのか…。暖簾をくぐれば異世界が広がる…なろうコン大賞受賞の異色作!




感想:★★★★★

内容はタイトルそのまま、異世界に繋がった居酒屋にやってきたお客様たちのあれやこれや。

転生ではありません。

表玄関は異世界に通じていて、裏口は元の世界のまま…のよう。
なので仕入れは元の世界から。
異世界産の食べ物も使わないわけでは無いですが。



構成としては10~15頁ほどの短編(掌編って言うんでしたっけ?)が20本。

これがまた良い味出しているんですよ!(居酒屋だけに)



居酒屋って、色々なお客様が来店して、お酒の力も借りてよくしゃべるじゃないですか?
当然その一人一人には物語があるわけで。

その物語達を無理なく主観変えて描くという目的の上で、この構成がうるさすぎず静かすぎない良い塩梅を出してくれてます。

物語たちとはちょっと違うけど、色々な身分(異世界なのであえて身分という言い方で)によって、居酒屋の中でも目をつけるポイントもちょっとずつ違うんですよね。

兵士なら(平たく言えば)コスパ。
貴族なら美味しさ。

その違いを居酒屋ひとつで、もっと言うならしのぶとタイショーの二人が演出している風景が好きですね。



それと、途中からわたしもお酒呑みながら読んでいて気付いたんですが、この本全体が居酒屋での流れそのものになっているんです。

何が言いたいかというと。


序盤はお客様の目線から「のぶ」を見る
⇒いわば「お通し」と「最初の一杯」

雰囲気を把握してから徐々に「のぶ」が異世界に繋がった経緯や、お客様同士の繋がり、はたまた「のぶ」存亡をかけた事件まで
⇒油物や主菜みたいな「お腹に溜まるおつまみ」と、「自慢のお酒」の数々
⇒さらに呑みの醍醐味、楽しい楽しい「おしゃべり」

そして最後にタイショーとしのぶの和やかな一幕
⇒これは掌編のタイトルそのまま「〆の鮭茶漬け」



ね!?

ずっと家の布団の上だったのに、読み終わった時に思わず「さて…帰るか」と呟いてしまうくらいには居酒屋気分でした。
家にいるのにどこに帰ろうってんでしょうね!



えー、そんなわけで予想以上に面白かったです。
2巻読むときは絶対に日本酒を用意してから読みます!



《メモ、あるいはお品書き》

作中に登場したお酒をまとめておきます。

・剣菱(59p)⇒伊丹→神戸
・八海山(69p)⇒新潟・魚沼
・一ノ蔵(74p)⇒宮城
・梅乃宿(97p)⇒奈良
・上善如水(199p)⇒新潟・魚沼


本文中にも「引き締まった辛口」という表現があるので、一ノ蔵は呑んでみたいです!
(21にして好きなお酒が日本酒に落ち着いた子)
(銘柄・酒蔵ごとの味の差を感じられるようになってきたから、次は好みの1本を探したい)

おすすめの日本酒、募集します




以上!

しのぶの接客の心について書き損ねたので、それは2巻の感想のときに!


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