今日のラノベ!
九木野瀬くん、会話のセンスは高スペック
久々のオーバーラップ文庫でした!!
(具体的には『アルカディア=ガーデン』以来2年8ヶ月ぶり!)
表紙の赤三月さんの凛とした雰囲気に惹かれたのと、公式発売日12/25に掛けたのかクリスマスっぽい配色だったのが気に入って購入しました。
登場人物はシンプルに3人
「何でもできてしまうから」人生を終わらせようとしていた『万能』の虐殺スペック・赤三月さんと、
そこにたまたま居合わせてしまった低スペック・九木野瀬くん、
そしてそんな2人に自殺を止められた『美術』と『容姿』の虐殺スペック・黒花さん。
今生きている「人生」そのものの攻略本を作るという低スペックからしたら途方もない目標、それを『万能』の虐殺スペックは如何にして成し遂げようというのか!?
そんなお話。
面白かったです!!
言ってしまえば天才に振り回される凡人の物語。
しかし、「虐殺スペック」というパワーワードをひとつ放り込むことで、既存の作品とは一線を画しています。
周囲の人の心を殺すほどのスペック。
実にうまいネーミングです。
低スペックながら努力は重ねてきて、常人よりも多少頭が回る九木野瀬くんが死んだ魚のような目をしていて、音楽の世界からドロップアウトしたような過去がチラチラ見えていて、そんな彼が作った言葉と考えると殊更素晴らしいです。
でも実は『万能』の虐殺スペックを持つ赤三月さんも、周囲に期待されているように振舞う中で自分自身をも殺しているのかな、とも思ったり。
作中でも言及ありましたが『万能』だからといってもチームスポーツを勝利に導くことは出来ないし、体格や筋力がモノを言うところは守備範囲外だったり。
一部のジャンルでは突出していても他のジャンルで底辺彷徨っている黒花に至っては、むしろ虐殺スペックこそが彼女の人生を苦難に導いているようで。
思っていたのとはまた違う方向で、生きることの「ままならなさ」を突きつけられたような気がします。
スペック差による人生の難易度とか、そういう方向だとばかり思っていたので。
そういう要素ももちろんありましたが、それは多分主題では無いんですよね。
――スペックによって人生の進み方は変われど、その道中にはたとえ周りが理解できない類でも本人にはどうしようもない困難が待っている――みたいなところが主題だったのではと。
いやー、人生って本当にどう転ぶか分からないな……
で、冒頭の「会話のセンス」ってところですけれども。
ちょっとした軽口の応酬がそれなりの頻度であるんですが、これがとても面白い!
特に短いフレーズでテンポを作り上げて笑わせにくるのがとても上手いです!!
2往復くらいで完結するやつ。
54pの
だったりとか、ほんとこのくらいのコンパクト感。
こういった流れがポンポン出てくるので、飽きないですし、シリアスも際立ちますし。
この軽口が許されている空間の会話の中で「令名」とか出てきて、それに九木野瀬くんも全く動揺せず反応できているあたりとか痺れますよね!
なんだろう……
スペックとかでは無い部分、後から努力で付与される部分を尊重している雰囲気というか。
痺れますよね……
6p:本人に言うな……
⇒白紙答案提出が自殺の兆候っていうの、本人に言ったら絶対ダメでしょ!!
九木野瀬くんだったから良かったものの!!
「そうか、無気力……自殺もアリか……」とか選択肢に含まれちゃったらどうするの!!
こう、それとなく、いやどうしたら良いかまでは分からないですけど!
114p:死んだほうがいい
⇒自殺未遂現場を目の前にしたことのある人とは思えない一言(内心、自分への毒とはいえ)。
このあたり、さすが九木野瀬くんだなって思います。
191p~:然り、然り
⇒人生の攻略本、その取っ掛かりとして手をつけた「勉強法」について九木野瀬くんが黒花にレクチャーしているシーン。
「授業はテスト対策として非効率だから自習しろ」とか「昼に暗記、夜に実践」とか「覚えて忘れての繰り返し」とか、私も実践してた学習法がドンドン出てきてめっちゃ頷きながら読んでました。
万能法では無いけれど、初級編、8割取るための学習法ならこれ以上のものは無いと思っていたので嬉しいです。
「時間は低スペックの味方」みたいなところも本当にその通り……
凡人だから、時間をかけて非効率的にやるしか無い。
でもそれを受け入れて実際にやることに、やる気が必要なのです。
281p:誰!?
⇒この終盤での、メールのみでのご登場となる九木野瀬くんの知り合い。
……いや、誰!?!?
人生
ただ生きているだけでは、ままならない
変えようと思い、
行動し、
試行錯誤し、
それでもうまくいかない
それが人生
純粋に、これから赤三月たちがどんな攻略法を見せてくれるのか楽しみです!
以上!
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著者: | イラスト: | レーベル: |
---|---|---|
【あらすじ】 世の中、才能で人生決まる。低スペックな俺は周囲の心を殺すほどの圧倒的な才能をこう呼んでいる――『虐殺スペック』。ひょんなことから『万能』の虐殺スペックを持つ美少女・赤三月朝火の自殺を阻止した俺は「なんでも出来て退屈したから」とのたまう彼女に、せめてもの抵抗として反論した。 「なあ――出来ることじゃなくて、お前にしか出来ないことを見つけろよ」 翌朝、朝火から『人生の攻略本作り』を手伝えと脅迫された俺は、条件と引き替えに制作を始めるが、朝火の攻略法は斜め上をいくものばかりで……!? 低スペックが制作する人生攻略本、特典として万能美少女付き! |
感想:★★★★★
九木野瀬くん、会話のセンスは高スペック
久々のオーバーラップ文庫でした!!
(具体的には『アルカディア=ガーデン』以来2年8ヶ月ぶり!)
表紙の赤三月さんの凛とした雰囲気に惹かれたのと、公式発売日12/25に掛けたのかクリスマスっぽい配色だったのが気に入って購入しました。
登場人物はシンプルに3人
「何でもできてしまうから」人生を終わらせようとしていた『万能』の虐殺スペック・赤三月さんと、
そこにたまたま居合わせてしまった低スペック・九木野瀬くん、
そしてそんな2人に自殺を止められた『美術』と『容姿』の虐殺スペック・黒花さん。
今生きている「人生」そのものの攻略本を作るという低スペックからしたら途方もない目標、それを『万能』の虐殺スペックは如何にして成し遂げようというのか!?
そんなお話。
面白かったです!!
言ってしまえば天才に振り回される凡人の物語。
しかし、「虐殺スペック」というパワーワードをひとつ放り込むことで、既存の作品とは一線を画しています。
周囲の人の心を殺すほどのスペック。
実にうまいネーミングです。
低スペックながら努力は重ねてきて、常人よりも多少頭が回る九木野瀬くんが死んだ魚のような目をしていて、音楽の世界からドロップアウトしたような過去がチラチラ見えていて、そんな彼が作った言葉と考えると殊更素晴らしいです。
でも実は『万能』の虐殺スペックを持つ赤三月さんも、周囲に期待されているように振舞う中で自分自身をも殺しているのかな、とも思ったり。
作中でも言及ありましたが『万能』だからといってもチームスポーツを勝利に導くことは出来ないし、体格や筋力がモノを言うところは守備範囲外だったり。
一部のジャンルでは突出していても他のジャンルで底辺彷徨っている黒花に至っては、むしろ虐殺スペックこそが彼女の人生を苦難に導いているようで。
思っていたのとはまた違う方向で、生きることの「ままならなさ」を突きつけられたような気がします。
スペック差による人生の難易度とか、そういう方向だとばかり思っていたので。
そういう要素ももちろんありましたが、それは多分主題では無いんですよね。
――スペックによって人生の進み方は変われど、その道中にはたとえ周りが理解できない類でも本人にはどうしようもない困難が待っている――みたいなところが主題だったのではと。
いやー、人生って本当にどう転ぶか分からないな……
で、冒頭の「会話のセンス」ってところですけれども。
ちょっとした軽口の応酬がそれなりの頻度であるんですが、これがとても面白い!
特に短いフレーズでテンポを作り上げて笑わせにくるのがとても上手いです!!
2往復くらいで完結するやつ。
54pの
「赤三月、なんで飛び降りなんてしたんだ」
「べつにー」
「語尾を伸ばすな」
「べつーに」
「…………」
だったりとか、ほんとこのくらいのコンパクト感。
こういった流れがポンポン出てくるので、飽きないですし、シリアスも際立ちますし。
この軽口が許されている空間の会話の中で「令名」とか出てきて、それに九木野瀬くんも全く動揺せず反応できているあたりとか痺れますよね!
なんだろう……
スペックとかでは無い部分、後から努力で付与される部分を尊重している雰囲気というか。
痺れますよね……
読書メモ
6p:本人に言うな……
⇒白紙答案提出が自殺の兆候っていうの、本人に言ったら絶対ダメでしょ!!
九木野瀬くんだったから良かったものの!!
「そうか、無気力……自殺もアリか……」とか選択肢に含まれちゃったらどうするの!!
こう、それとなく、いやどうしたら良いかまでは分からないですけど!
114p:死んだほうがいい
⇒自殺未遂現場を目の前にしたことのある人とは思えない一言(内心、自分への毒とはいえ)。
このあたり、さすが九木野瀬くんだなって思います。
191p~:然り、然り
⇒人生の攻略本、その取っ掛かりとして手をつけた「勉強法」について九木野瀬くんが黒花にレクチャーしているシーン。
「授業はテスト対策として非効率だから自習しろ」とか「昼に暗記、夜に実践」とか「覚えて忘れての繰り返し」とか、私も実践してた学習法がドンドン出てきてめっちゃ頷きながら読んでました。
万能法では無いけれど、初級編、8割取るための学習法ならこれ以上のものは無いと思っていたので嬉しいです。
「時間は低スペックの味方」みたいなところも本当にその通り……
凡人だから、時間をかけて非効率的にやるしか無い。
でもそれを受け入れて実際にやることに、やる気が必要なのです。
281p:誰!?
⇒この終盤での、メールのみでのご登場となる九木野瀬くんの知り合い。
……いや、誰!?!?
まとめ
人生
ただ生きているだけでは、ままならない
変えようと思い、
行動し、
試行錯誤し、
それでもうまくいかない
それが人生
純粋に、これから赤三月たちがどんな攻略法を見せてくれるのか楽しみです!
以上!
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