今日のラノベ!

月とライカと吸血姫


月とライカと吸血姫

著者:
牧野圭祐

イラスト:
かれい

レーベル:
ガガガ文庫


【あらすじ】

 いまだ友人宇宙飛行が成功していなかった時代。ツィルニトラ共和国連邦の最高指導者は、人間をロケットで宇宙に送り込む計画を発令。その裏では、実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。閉鎖都市で訓練に励む宇宙飛行士候補生のレフは、実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナの監視係を命じられることになる。上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、ふたりは命懸けで遥か宇宙を目指す。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ。




感想:★★★★★



綺麗!!









国家間の開発競争とか地位や権力への固執だとか、そういう醜い大人の世界の中で描かれているからこそ、レフとイリナの抱える純粋な「宇宙への憧れ」がとっても綺麗でした!!




この作品、総じてそういう対比がうまかったなぁという印象です。


ツィルニトラの白一色に染められた景色と、宇宙から見たオーロラ輝く青い地球の姿とか。
候補生補欠のレフの純粋さと、候補生トップのミハイルやローザの必死さとか。


ただ、間違っちゃいけないのが綺麗じゃないほうの扱い。
そちらはそちらで、必死さ、泥臭さ、執念深さへのリスペクトが感じられて、決して悪印象を抱くような対比ではありませんでした。


(もっとも、そういう描き方をしないと吸血鬼だけを特別視するだけの、上辺だけの平等を謳うことになるので当たり前と言えば当たり前)








うん、まぁ……
これだけ「綺麗事」な感想を書けるのも、全てはイリナの宇宙飛行のシーンがあってこそですよ。


人類初の有人宇宙飛行。
打ち上げのシーンは鳥肌を抑えられないほど緊張と興奮に包まれて。
訥々と語られるブリュシチの調理法は、内容と裏腹に希望に満ち溢れていて。
あくまでも「実験体」として扱っていた上層部でさえも、「有人」の飛行に興奮を抑えきれてなくて。
キャビンから見る月はとても綺麗で。
難題だった帰還時のパラシュートも何とか成功して。



全てうまい方向に転がったからこそ、です。
この打ち上げが失敗してたら…………相当に心抉られていたでしょうね……想像するだけで恐ろしい……

それはそれで読みt








吸血鬼という未知の存在と、宇宙という未知の場所。
物語が進むにつれて、それぞれ既知の事柄が増えていき…………うん、なんかそれはそれで厄介なことが待っていそうですけどね。

色々知っちゃっているからこそ、今後のイリナの処遇がアレなわけですし。
イリナがアレだとレフのアレもアレですから、そうなると物語の気色も変わってきてしまうからムニャムニャ。







どのタイミングまで「綺麗な物語」であり続けるのか、楽しみです




以上!




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