どもー!
デスカイザーです。


ただの休日、予定も何もない休日でありながら「よし、スロットだ」という気持ちを我慢するまでもなく沸き上がらない休日はいつぶりか!!
ふふふ……読書が楽しい……



今日のラノベ!


青春失格男と、ビタースイートキャット。

青春失格男と、
ビタースイートキャット。

著者:
長友一馬

イラスト:
いけや

レーベル:
富士見ファンタジア文庫


【あらすじ】

高校に入学した日。野田進は桜の木から落ちてきた清楚系女子、宮村花恋と運命的な出会いをし、誰もが羨む高校生活を手に入れる。だが進は、そんな普通の幸せに満足できなかった。「あなたは、青春不感症なんです」そこに、エキセントリックな孤高の天才児、西條理々が現れる。彼女の言葉で、進の日常は甘くきれいに溶けだした。「私の足を舐めろ、です。大人の味を教えてあげます」友人も、家族も断ち切って、世間から孤立する。進と理々だけの秘密の共犯関係―“楽園追放計画”が始まった。目を背け、逃げ続ける。ふたりだけの幸せを信じて。第30回ファンタジア大賞“審査員特別賞”受賞作。




感想:★★★★★




誰もが羨む美少女・花恋と運命的な出会いをし、おっぱいラブレター攻撃を受けても驚くのみで性的な衝動はゼロ。
友人との付き合いはそれなりにこなすも、それは表面上友情を成り立たせるための義務的行動であり、楽しいとは感じない。

青春を理解できない主人公・進(シン)が、進以上に周囲と迎合することを嫌う西條に見初められ、周囲との関係を断ち二人だけの世界を作ろうとする物語。

第30回ファンタジア大賞にて審査員特別賞を受賞した作品です。



いわゆる「普通の高校生活って何だろう?」という疑問にぶつかっていくタイプの作品で、その中でもよりエキセントリックな方向に振り切れている作品。
超常の力を一切使わない至って平凡な高校生にできる最大の叛逆を試みる西條が、なかなか割り切れない進に対してする指示は苛烈。



「噴水の池に突き落としてください」
「(バスケットを)投げ捨ててください」

本文81p、115pより


当然と言えば当然ですが、指示のまま行動できる進ではなく西條のイライラは増すばかり。
しかし、進が応じる唯一の命令があります。
それが、


「私の足を舐めろです」

本文54pより


西條に傅き、舐めること
ここの妙な純粋さにとても惹かれました。

エロいシーンではありますが、『魔装学園H×H』みたいな直接的なものではなく、もっと抽象的だったり芸術的な方面でのエロスという言葉がしっくりくるような描写でした。
いっそ一般文芸における性交のような物語装置としてのエロスに近いかもしれません。
しかしそれらと同一視するのが憚られるのは、そこに本人たちの揺れる意思が介在しているから……でしょうか?


叛逆しようと行動するも、結局それらは同級生、先生、家族といった、この年頃の子供からは切っても切り離せない存在により行き着く所に行き着く前に止められてしまいます。
離れようとしているのに、止めてもらえることを知っているかのようなそんな曖昧な態度が二人から見え隠れしているんです。
だから、かどうかは分かりませんが止められてしまう。


二人にとって「どうしても切り離せない存在」が居ることが計画進行において最大の障害であるかのように語られ続けていましたが、本当のところはどうなのでしょう?
最後の最後にはひどく歪な形でひとまずの決着を見せましたが、二人の本心がどこにあるのかを見極めないことには物語が進み出すことは無さそうです。

青春が繰り広げられるコミュニティは苦手だ。
しかし、その気持ちを共有する“誰か”の存在はほしい。

そんな二人の行く末を、続きが出るのであれば見守っていきたいです。




読書メモ




24p:ハルヒ
⇒『涼宮ハルヒの憂鬱』と言えば!な自己紹介シーンのオマージュ。

「ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、にも興味はありません。よろしくしねぇで一生放ってろです」

本文24pより

このオマージュは、ある意味『ハルヒ』からの決定的な決別を意味していたのかな、と思います。
あちらは「ただの一般人」と「ただの人間であるだけの異常な存在」と「超常の存在」による物語でしたが、こちらは「少しばかり天才的に頭の良い女子高生」と「周囲より少しルックスに優れ歌のうまい男子高校生」、いわば「ただの一般人」による物語であるという宣言です。
ともすれば自信に満ちた異常な存在であるとも取れそうな西條を、ただの人間であるという前提条件に押し込める魔法の一文であったと思います。

「この作品、面白くなる」と確信したシーンでした。




55p:フェティシズム
⇒足舐めにかける著者の情熱が凄まじいです!
私自身にそういった性癖はこれっぽっちも存在しないのが残念に思うくらいには魅力的なフェティシズムの詰まった文章ですね……。
……いや、本当にこれっぽっちも存在しないですよ?本当に!




178p:決壊
⇒進が今まで溜め込んできた気持ちがフッと切れるシーン、素晴らしいです……。
「プッツン」とか「ブツッ」とかそういう決定的な音が鳴るのではなく、「フッ」と音もなく解けるかのような表現で、メンタル的にか弱い自分としては分かるボタン連打でした。
直近だとアレですね。
抑揚を一切受け付けてくれないクソみたいなマイク設定のカラオケ店で採点頑張ってた時に、1時間半くらいで「フッ」ってなりましたね。
そして始まる菅田将暉熱唱タイム




215p:計画凍結
⇒何者にもなれず、何者にすがることもできない宙ぶらりん。
やはり二人が「ただの一般人」であるからには当然の帰結で、このワンクッションがあったからこそ今巻の決着の狂気度が跳ね上がるんですよ……




まとめ




行くところまで行ったら死人が出てもおかしくない物語だと思います。
このままだと誰かのこころが壊れちゃいますもん。
それが進なのか、西條の母なのか、花恋なのかは分かりませんが。

もちろんこのまま停滞するような二人ではないと思いますが、かといって一旦の安定を得てそこからの行動が難しい状態で一体どういった選択をするんでしょう……?
選択をして掴み取った現状もまた、宙ぶらりんのまま。
支柱を得るのか、支柱になるのか、支え合うのか。

続刊が出るにしろ出ないにしろ、二人の行く末を案じることは暫く続けたいです。




以上!





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