今日のラノベ!




俺だけが死んでいる

俺だけが死んでいる

著者:
羽根川牧人

イラスト:
kona

レーベル:
ファミ通文庫


【あらすじ】

高町十折は交通事故で亡くなった―と思いきや、目覚めたら学校にいた。何故かクラスメイトは彼の姿が見えるらしい。そして、またたく間に成仏するべき派と、幽霊のままでいい派にクラスは分かれてしまった。しかも成仏派の筆頭は、密かに憧れていた久住沙羅!冷静に成仏すべき論を言う沙羅に、十折は悲しみと怒りから宣言する。「俺が消えることをお前が悲しいと思うようになるまで絶対成仏しない!」その日から、十折の新しい学園生活が始まった!





感想:★★★★★




う……ああぁ…………








修学旅行中に乗っていたバスが事故を起こし、運悪く死んでしまった主人公・十折がクラスメイトにしか見えない霊になり、伝えることのできなかった好きだという気持ちをクラスメイトの沙羅に伝えるまでの物語。



感情がとても忙しかったです



冒頭の修学旅行のシーンをはじめ随所にある普通の青春模様は、読んでいる間は普通のシーンなのに読後にはとても尊くかけがえのないものに見える仕掛けがありました。
むしろ普通であることが最大の仕掛けというべきでしょうか?
多くを語れるほど特別なシーンでないことこそが何よりの特別なんです……



表紙の4人(左から十折の幼馴染の朔、同じく幼馴染の明日花、主人公の十折、辛辣姫こと沙羅)が繰り広げる友情と愛情の駆け引きは、その内の1人が既に死んでいるということを感じさせないほど生に満ち溢れたラブコメでした。
口絵にもある「ギャップ萌えで殺す気か……」のシーンとか最高ですよね……!
後からジワジワくる破壊力があります。泣きぼくろとか。

幼馴染同士だけでも綺麗に三角関係を築いているのに、沙羅が加わってもそれはそれで綺麗な四角関係になっているというのがラブコメとして面白かったです。
その関係性も物語が進むにつれて徐々に矢印が補足されていき……



「夢は叶えるものか、それとも見るものか」という命題を掲げつつ、生きた証しとして1本の脚本を残すという沙羅と十折のチャレンジもまた、違う形の青春です。
沙羅は「夢は見るもの」派でしたが、もしかしたら本来の主張とは別の意味も含まれていたのかもしれないと読後の今では思います。
制限のある中で沙羅が出せた最大のヒントはコレだったんでしょう……。
うあぁ…………。



そしてラストには、読む前には想像もしていなかったオカルトというかファンタジーというか、それまでの展開が全てひっくり返るかのようなイレギュラーと、伏線を全て回収しきる息をするのも苦しい50p。
特に最終章「Good bye again」に入ってからは本当に悲しくて苦しかったです……。

それまでのストーリー、タイトル、口絵、修学旅行で訪れた天橋立、同じく伏見稲荷大社……。
使える要素を全て使っての盛大な仕掛けと、中盤で広げすぎかと思われた風呂敷をたたみ切る構成に驚かされました。
特大のイレギュラーに関しては、それまで提示されていた情報から導くには少し飛躍している設定だったので評価が分かれるところなのかもしれません。
その「少し」が気にならないくらいにはその後の展開が衝撃的だったので問題ないとは思いますが.







ああ、それにしても「こうなっちゃったかー……」な感情をどうしましょう?
このラストは全く想像していなかった訳ではないですが、流石に特大のイレギュラーは想定していなかったので辻褄が合わず没にしていた想像だったんですよね……。
具体的には「他のクラスの人が朔と明日花が抱き合っているのを見ていた」という描写が辻褄合わなくてですね。

なので、展開そのものもショックですが、一度没にした予想が合っていたというショックも結構キテます……。
そんな状態でレジに立ってた私を誰か褒めてください……。

とりあえず……読書メモいきます。






読書メモ




32p:そもそもどう死んだ?
⇒描かれているようで描かれていない、十折の死亡シーン。
幾度かに分かれて言及されましたが実(ここで途切れている)



71p:つら……
⇒死後に自分の名前の由来を知るって、どうしようもなく苦しく悲しいですよ……。
十折父の

そう思っていたんだがな


というセリフに込められた哀愁が余計につらくて、胸を掻き毟りたくなるような衝動に駆られました。



91p:クラスマスツリー
⇒誤字ぃ……



101p:イラスト
⇒章扉絵とでも言うんでしょうか?
どの章についているイラストも沙羅が素敵です……。
それを確信した2章と、やっぱり最後の5章は忘れられないですね。



106p:抜き取る
⇒十折が自分のもの以外触れないという設定はいずこへ……という感じで沙羅所有のブルーレイをひょいっと本棚から抜き取るシーン。
設定の覚え間違い……?



149p:偶然
⇒このシーンを読んだ時点ではちんぷんかんぷんな沙羅の発言も、読後の今読み返すと言いたかったことが分かりますね……!
うあぁ……つら……



277p:ラスト2行
⇒完璧な後味。
これだけ多くの要素を抱えつつも「夢に対してのスタンス」という中心軸をハッキリとさせ、立ち止まる時間は終わったことを暗に示すかのように扉を閉めるという動作で終わる。
ん~~~、気持ちの良い終わり方!





まとめ




Twitterでオススメされていたのを見て飛びついて買いましたが、本当に読んで良かったです。
名前は伏せますがオススメツイートをしていた方、ありがとうございます!!


死んでから生きた証しを残す物語、と纏めることもできる今作。
少なくとも今生きている自分は何をしなければいけないのかを考えさせられました。
全てが後の祭りになってしまわないように、できることから少しずつ、それでも着実に取り組んでいかなければいけないと強く思いました。
一種、強迫観念じみているのでもう少しマイルドに意識したいところですが。




以上!





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