今日のラノベ!



西野


西野
~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~

著者:
ぶんころり

イラスト:
またのんき▼

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)





感想:★★★★☆



学校では良くも悪くも目立たないフツメン、裏の世界では知らない人のいない暗殺者。
それが西野である



詳細不明の異能を用い最短で最速に依頼をこなすがフツメン。
それが西野である



青春の思い出を作るべく文化祭の準備にかこつけて女子に話しかけたらいじめを受ける程度のフツメン。
それが西野である



学年一の美少女に話しかけられるだけで周りがザワつく影の薄さ。
それが西野である



薄暗いバーでクールにお酒を嗜み悪態をつくも、顔面偏差値的に締まらない。
それが西野である






西野という存在が大体どういう人物なのか、それは理解できました。
表紙買いしたその動機は「西野とは何者……」というものだったので、そういう意味では期待通りに面白かったと言えます。






ただ、妙に残る読後のモヤモヤ感。
これは書き残さねばと必死に考えていましたが、とりあえず2本柱に絞れました。




1つ目は、物語の進まなさ。


人間関係は(主にマイナス方向に)進んでいますしフラグもどんどん立てられているんですが、そのフラグをほぼ回収しないままの終了となったため、不完全燃焼感がすごいです。
これはタイトルに(上)とか(1)とかが付いていたらまだ緩和されていたかもしれません。
もっとも「緩和」であって「撤回」ではありませんが……。

序盤のローザの奇行が後半になると見る影もなかったのが物凄く気になっていますし、文化祭はどうなるんだろうとか、西野意外の異能は?とか、フランシスカの出番とか、他にも大小様々なポイントが残されていて……。
逆にこの巻で何か達成感のある物語進行があったかと言うと、マフィア相手の大立ち回りくらいでしょうか……?
停滞している訳ではないのであまり強く言えないんですが、それにしても進まない……。


裏を返して言えば、あまり進まなくても面白いと思えるだけの魅力が西野とその周囲にあるということでもあります。
まぁ、だからこそ★4評価にしつつ気になる所を主軸に感想書かせていただいているんですが。





2つ目は、いじめっ子目線に見えること。


これはもうアレルギー反応みたいなものなのでしょうがないんですが……。



西野=フツメン、スクールカースト最下位

という図式こそ今作の最大の軸で、最大の武器です。
当然それを盛り立てるために、西野がいかにフツメンであるのかを懇切丁寧い説き、西野の行動がいかに容姿に合わず分不相応なことをしているかがじっくり描かれています。
例えば58p。


そんな至って普通のフツメン。どこにでもいるフツメン。
現代日本における顔面的マジョリティ。
だからこそ、こうした非日常では、その面白さが際立つ。
本来、フツメンでは挑めない領域。
特にローズのような美少女が並び立つと、彼の存在はまるで冗談のようだ。たとえ金属で作られた本物の拳銃であっても、彼が手にした途端、プラスチック製の模型に成り代わってしまったのではないかと錯覚するほどの、圧倒的フツメン。

   本文58pより


未だかつて、これほどフツメンについて詳らかに語られた文章があったでしょうか?
本来語られず埋もれる存在であるフツメンに対してこれだけ情熱的な文章を捧げていることこそ、ぶんころり先生の凄さの現れでしょう。
それは間違いないんです。



ただ……
変なあだ名とかちょっとした外見的特徴とか、そういうので弄られたりいじめられたりしたことがあってメンタルがあまり強くない人が読むには毒が強いというだけなんです。


途中までは全く気にならず、それこそ上で引用した文章についても肯定的な読書メモを残すくらいだったんですが……。
クラス内で西野へのいじめが始まってからですね、気になり始めたのは。
西野自身は良くない空気を感じつつも強く生きているので暗い雰囲気にはなっていないですが、結局いじめはいじめで、西野が金や天然でそれを躱しているだけで何も解決していないんですよね……。

特にラストエピソードがきつくて……。
身の丈に合わないスーツを選ばせた竹内君と、どうせ払えないだろうと適当な金額を提示したスーツオブスーツさん、不遜な発言の数々を店員にかけたらしい西野自身。
そして、「西野の顔でこの決めポーズで高級スーツ、万事手を尽くしてこの出来ですw」と言わんばかりの本編ラストの挿絵。
登場人物の発言から構成に至るまで全てが地獄。
そこまで言うかと思うかもしれませんが、そこまで言います。
何より、あの挿絵を見て一瞬でもクスッとした自分が許せなくて精神的に参ってます……



でも物語としては面白いんですよね……
…………ただやっぱりその面白さの原点は「西野がフツメンであることをバカにする」ことにある気がして、個人的には受け入れられない面白さですね……。
でも続きは読むんだろうなぁ……





読書メモ




24p:青ナンバー
⇒外務省から発行される外交官専用車のナンバーが青色なんですね!
ひとつ賢くなりました!
今度からニュースで注視してみます。
……えっ、これ常識?



92p:これが西野
⇒今までの余裕綽々な態度からなんとなくの想像はしていましたが、返り血も浴びず、表情も変えず、切断した生首を無感情で歩いて持ってくるまでの存在なことは想像以上でした……。
93pのローズの驚く顔が可愛い。



144p:細かく言えば……
⇒繰り返しての説明が多かったですね。
web発ということですから、ネット掲載時の章を挟み時間を空けての更新を考慮した文章の名残ですね。
いわゆる「またなろうかよ」って言う方たちは、異世界だのチートだのに文句つける前にこの文章リピート問題を槍玉にあげるべきだと思います。



155p:盲点
⇒机にイタズラされたら、机ごと入れ替えてしまえば良い。
これは盲点でした……




まとめ



「すべてのフツメンへ贈る」と帯で謳われていますが、とんでもないです。
外見や微妙な特徴で(世間的に見れば)軽いいじめを受けた経験があり、今もその傷が癒えきってないフツメンの方にはオススメしません。


個人差はあると思いますが、TVバラエティー番組「スカっとジャパン」を楽しめる人には楽しめますし、あれを見てイライラする人は向いていないと思います。




作品自体の質はとても高いです。
それだけは間違いないので、末尾ですが改めて強調させていただきます。






以上!



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