今日のラノベ!
著者: | イラスト: | 出版: |
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【あらすじ】 台湾の高校生・慕飛は、成績優秀・容姿バツグン、おまけに世界的に有名なコックを父親に持ち、高校卒業後は自動的に事業を継ぐことが決まっている、正に非の打ちどころのない生活を送っていたが、トラックに轢かれそうになっていたニートを助けてやったために、ニートに巻き込まれるようにして異世界に転生してしまう。 けれど“ニート主人公でないとチート能力を授かれない”という慣例によって、異世界転生の主人公になれず、何の能力も与えられなかった慕飛は、初心者向けの村・バニータ村で雑用として働き始める。 異常にケチ臭いハーフエルフによって支配された閉鎖的な村での生活は苦しく、助けてやったはずのニートは『天選之子』として祀り上げられたことですっかり舞い上がり、慕飛のことを奴隷のように扱うのだった。 それでも自分の身を守る術も持たない慕飛には村から出て行くという選択肢はなかった。 しかしそんな彼の住む村を、突然一匹のドラゴンが襲ったことで、村での生活が一変してしまう。 果たして彼は異世界での生活を変えられるのか、 そして再び台湾に戻ることができるのだろうか─── 台湾角川新人賞でデビューして以来、予測不能な展開で台湾のライトノベルファンを翻弄して来た作者が贈る、今までにない異世界転生ラノベ。 |
感想:★★★★☆
初、台湾ラノベ!!
この作品の翻訳を担当されているharako atomさん(@harakoatom)から「是非読んでみてください!」というDMを今朝頂きまして、速攻で買って読んでみた次第です。
以前夏鎖芽羽さんのブログでも特集していたので、台湾発のラノベには興味があったのです!
(リンクはこちら:ラノベは国境を超える!台湾発のライトノベル特集!)
また、今作はkindleストアにて2018/4/18~4/22深夜にかけて無料で購入することができます!
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また、kindle unlimitedにも対応していそうなので、利用者の方はぜひぜひ!!
では、感想へ。
世界中の美味しい物を食べたい!
その一心からドラゴンスレイヤー、すなわちドラゴンを狩る者となり旅をする少女・ジークフリートことフリートちゃん。
転生してやって来たものの特に力を与えられた自覚もなく、元の世界で培った料理スキルで何とか生きながらえていた慕飛がフリートちゃんと出会い、共に旅をし、ドラゴンに舌鼓を打つ。
そんな物語です!
グルメものです!!
……公式あらすじも間違ってはないのですよ?
内容が序盤も序盤というだけで。
まずは一言、面白かった!!
ドラゴンを食すという「ありそうで稀にあるお話」ですが、そのドラゴンの幅をこれでもか!と広げてきたのは斬新だと思います!
今作では鳥とかトカゲとかも大体ドラゴンです。
でも馬は馬。
もしかしたら馬っぽいドラゴンも居るのかもしれませんが……?
そして、一般的に思い浮かべるドラゴンもいます。
翼を持った爬虫類みたいなヤツ、います。
ドラゴン #とは
みたいな感想を誰しもが(慕飛も含めて)抱いているかと思いますが、そういうものなのです。
最初は恐竜からの進化の過程を考慮したものかと思いましたが、終盤に出てきたドラゴンがその仮定から外れた存在だったので特にドラゴン化する条件は無さそうです。
そしてそれらの多種多様なドラゴンを、食べます。
……えぇ、食べます。
切って、焼いて、味付けして、食べます。
特別な強化能力があるとかもなく、美食として食べます。
ここまで来ると胸を張って言えますね。
「ありそうでなかった」と!!
この設定を上滑りさせずに纏めきってるのはとても凄いと思います……!
読んでいる時の感覚的には一迅社文庫や角川スニーカー文庫のぶっ飛んでる設定の作品に近いものがあるんですが、それらと決定的に違うのはこの作品に底知れない数の未知が存在することでしょう。
・本当に慕飛は無能力で転生したの?
・慕飛の治癒が異常に早かったのは何故?
・「二品目」で登場する九ちゃんというロボットは誰が作った?
・銃やGPSという概念はどこで生まれた/誰が持ち込んだ?
・フリートの乗る白馬は何故喋ることができる?
・何故フリート以外は美味しいドラゴンを食べない?
と、パッと思いつくかぎりでもこんな感じです。
謎を謎のまま放置している状態で先に進んでいるので「これフラグ回収ちゃんとするんだよね……?」と不安になる気持ちも少しはありますが。
その一方で、「ドラゴンを食べる」というドデカい爆弾を放り込みつつこれだけの要素を散りばめられるというのは、やっぱり純粋に読んでいてワクワクします。
そして、慕飛の自意識の変化もこの作品の大きな軸のひとつ。
・イケメン
・エリート
・父は著名な料理人
・後を継ぐ事が確定
・イケメン
転生前はご覧のハイスペックな彼ですが、
無能力で転生したことでゴミのような目で見られ、一方隣のキモデブニートは魔法を扱えることでチヤホヤされるわけです。
彼がプライドに縛られるような人間だったらこの時点で逆ギレ⇒逃亡⇒ドラゴンの餌ルートが濃厚だったかと思いますが、彼は「持って生まれた環境が人の評価を変える」という事に気づき、素直に受け入れます。
こいつ精神的にもイケメンじゃねーか
その後もフリートや九ちゃんとのやり取りを通じてかつての自分を見直し、今後に活かそうとする場面が幾つかあり好印象でした。
公式あらすじの台湾戻るフラグが実った暁には、きっと彼はテストの空欄を埋める子に育っていることでしょう!
残りは読書メモ!
kindleなのでページ数ではなくロケーションで書きます。
読書メモ
ロケーション18:
醤油を買いに来ただけ
⇒本文注釈にもありましたが、「醤油を買いに来ただけ」というのは中国初のネットスラングで、「自分に何の関係があるんだ!」のような意味。
「自己防衛」や「でも幸せならOKです」のように、街頭インタビューから生まれるネットスラングというのは中国にもあるんですね!
我々日本人も積極的に使っていきたいですね。「醤油を買いに来ただけ」。
ロケーション187:助け……?
⇒慕飛がニートに対してしきりに言うんですよ。
「俺がトラックに轢かれそうなお前を助けたから転生した」と。
でも……多分轢かれてるから助けられてないはずなんですよね……。
むしろニートの転生に無理やり巻き込まれていったのは慕飛のほうなので、ニートに邪険に扱われても何の文句も言えないような……。
あるいは、死んでいないことを直感している慕飛が無意識に放っている言葉で、このドラゴンの世界で7つの珠を揃えることで現実の肉体に戻ることが可能になる明晰夢のような何かという可能性……?
ロケーション913:ノック
⇒慕飛が何の前触れもなくノックの正当性を長々と主張し始めて怖かった……
ドラゴン登場とかよりよっぽど怖いですよこのシーン……
ロケーション1390:鹽之眼
⇒当然のように読めなかったこの漢字。
「塩」の旧字体みたいです。
台湾ラノベは、こうした漢字の読みがメリットにもデメリットにもなっていきそうです。
メリットはストレートに漢字(あるいは台湾語・中国語)の学習ができること。
デメリットはこちらもストレートに読めないこと。
読書中に調べ物して、また本に戻って、というのが苦にならなければ問題なくメリット。
しかし、調べるのが煩わしい、集中して読書できないとなってくるとデメリット、となります。
文章の質そのものには関係なく、あくまで日本市場で売り出すならという話ですが。
ロケーション1416:あるいはコミケシステムとも言う
⇒並んでる間に買うものを決めておく例のアレ
ロケーション1654:塩味イタリア麺神教
⇒急に理解を超えてきたぞー!!
どういうことだー!!
もう頭の中パニックです。
異世界で、ロボットが、塩味イタリア麺を、神として崇める。
……パニックです。
ロケーション2122:白煙
⇒白い蚊が群れて、白煙のように見えるシーン。
なるほど、つまりスイミー理論か。
まとめ
様々な生物に似た姿のドラゴンを、食べるという斬新な設定!
台湾発という刺激!
楽しかったです!!
強いて言うならば、
・やけに強気なハーフエルフ村長が屈服する姿を見たかった
・折角なら魔鬼龍も食べて欲しかった(桜えびに見立ててかき揚げとか)
・かささぎの兄妹は無事?
上の3点は気になるところではあります。
が、それもまた続刊が出ればそこで解決するのかなー?という期待もあるので、続刊が翻訳されれば読みたいですね!
以上!
コメント
コメント一覧 (1)
原子アトムが輸入した、台湾製の核地雷。悪い意味で予想を裏切られる数々の展開に絶句……これでキャリア六年の作者……嘘でしょ?(ヤボ夫風)――『異世界にドラゴンを添えて』
http://ranobeprincess.hatenablog.com/entry/2018/04/23/164405