今日のラノベ!!


F級討伐屋の死にスキル

F級討伐屋の死にスキル 

「死ね」と言ってはいけない理由は?

著者:
黒九れいな

イラスト:
bun150

レーベル:
ファミ通文庫


【あらすじ】


討伐屋になって二年。未だに最低のF級のジンは、ギルドで憐憫の目を向けられても、頑なに単独クエストを続けていたが、C級装備の美少女エインに「秘密をバラす」と脅され彼女とパーティーを組むことになってしまう。しかし、楽勝のクエストのはずが、D級の粘竜に繁殖対象として襲われ、エインはあっさり貞操の危機に!?やむなくジンは“あの力”を発動させるのだが―。その“必殺”は無意味!?最弱のスキルを持つ少年のアクションファンタジー!




感想:★★★★★



ラノベ界の怪人二十面相、現る!




ありふれたジャンルをどう調理するのか気になりながら表紙買いしたのですが、とんでもない化け物に出会いました。

表紙から1pめくっての扉絵、ヒロインのエインが「殺してっ!」って叫んでいるイラスト。
まずこことタイトルを合わせて、

「なるほど。この作品は死という概念に多角的に切り込む作品なのかな?」

と予想を立てました。
それは間違ってなかったですし、物語の核に食い込む重要な部分でした。でもそれだけじゃぁ無かったのです。




序盤。
ギルドの酒場で寝たフリをする主人公・ジン。
周囲の人たちが嘲弄と心配を交えた目線を送る中、グイッと容赦なく踏み込み自信満々に巻き込んでいくエイン。
このシーンから、

「なるほど。この子の弱点とジンの弱点、お互いに補って死にスキルを活かしていくんだな?」

と予想を立てました。
これは半分くらい間違ってました。
補い合うというよりは、ほぼ一方的にエインをジンが補ってましたからね!
“ほぼ”というのがミソです。



中盤。
エインがならずものに捕まり、ジンが竜ではなく人に対して「死ね」と物語上で初めて言うシーン。
ここで一気に流れが変わり始めました。
さながら増水していた川の水門を開けたかのように、流れが早く、今まで見えてなかったものが見えるように。
序盤で粘竜との異種姦触手プレイえっちなシーンをコメディで済ませていたのに、ならず者相手のこのシーンでは一気に暗い雰囲気になっていましたが、これはここから先に人の醜い部分が前面に出てくることを示唆していたのでしょう。
また、ジンの過去に何かがあると決定的になったのもこのシーンでした。
人を殺すことにあまりにも慣れすぎているんですもの。
というかあの扉絵からトマトグシャァまでの落差すごいですね、大興奮です!(平常運転の二次リョナラー)



終盤。
ジンの義弟・ライナスの登場により、また流れが変わります。
先ほどの例えを続けるなら、水位が下がり豊かな生命体の育まれた川底が見えていたところに鉄砲水のような猛烈な濁流が押し寄せてきたかのような。
最早常識の通用しない暴論のライナス、ジンのスキルも通用せず。
回想が入り、そこに逆転の布石があったものの、同時に次々と凄惨な過去が明らかになり読者ボクのHPはガリガリ削られ。



弱りきった心に染み入る赤青コンビの赤のツンデレ!
大きな声の男の男気!
そしてエインとジンの濃厚なベロチュー!









これがラノベだ!!!!!






回想シーンで野犬に喰われる等の末路を迎えた女の子が良かったです(平常運転の以下略)。
趣味嗜好はともかく、本来口封じの殺しってあれくらい理不尽なものだと思うんですよ。
そこら辺を誤魔化して書いたり生温かったりする作品がたまにありますが、フィクションなんですから思い切って自分が一番酷いと思う状況を作り出して欲しいです。
いや、ホント性癖と趣味嗜好はともかくとした話です……よ?




このように!!!!!!
(エクスクラメーションマークによる強引な方向転換)


前半のコメディ・微エロから、後半のシリアス・微グロに至るまで実に多彩な表情を持っていました!
いちいち素直に反応してくれるエインが、この作品の急流によく馴染んでいてとても良かったと思います。
どの女の子も特徴がハッキリしていましたが、エインはメインヒロインたるだけあってジンから見た時に一番突出して見えるようになっていましたし、そう見えることを自然に受け入れられるだけの度量が作品にありました。

あと、ジンのコミュ障という特性を反映してなのか、赤青コンビをはじめ名前の出てこない重要キャラが幾人も居たのが好きですねー!
装備を変えたら判断がつかないとか、名乗りではなく外見から装備特性や戦い方を推測する、みたいな細かい部分からもフフッとさせていただきました!大好き!!







残りは読書メモにて。


読書メモ



70p:攻撃と防御
⇒素人とプロの差が顕著なのが攻撃よりも防御だという話にとても納得しました。
あのですね!!!
昔フットサルのキーパーやっていたんですけれどもね?
キーパーってそもそも一人じゃ型の練習しかできないうえに、シュート練習や戦術練習も実戦と想定しているとはいえ実戦とはかけ離れた状態でやるわけです。紅白戦も勝ち負けを本気で競う形でもない限り、(プロでもなければ)緊迫感がそこまであるわけでもなく。
結局一番練習になるのが本番の試合ということになるわけなんですよ。

っていうことを思い出しました(オチ無し)



93p:こなれてるな
⇒エインを巻き込んでいないかを

やべ

で流すあたりに猛烈な違和感と不穏な空気を感じました。
ここから流れが変わってきた、というのは上述の通りです。



106p:暗殺、やっぱり
⇒不穏ワードの登場ですが、やっぱりモノローグでさらっと流すんですよ。
闇の深さにいよいよ覚悟を決めたのがココでした。



148p:恥ずかしいッ!
⇒……覚悟を決めた矢先の勘違い生前葬というコメディパート。
ノンネームドキャラがとても良い仕事をしていますw



188p:弟!?
⇒他国に何かあるとは示唆されていましたが、まさか王族とは……。
ついでに言うならここの驚きレベルを残りの80pで3回くらい塗り替えていくからズルいと思います!
そんなん面白いに決まっとるやん……


196p:怒声
⇒ダメ押しの良ポイント!
本気で怒った時に立場とか関係性とかキャラとかを忘れた言葉遣いになるって、当たり前にありそうでフィクションではあまり見ないんですよね。
結構しっかり敬語使ってたり順当な言葉選びだったりするので、フィクションって大変だなぁってたまに思ってました。
でも今作の騎士セシルは違いました。
凶行に出たとはいえ王族に向かって、幼い護衛対象の前で、




何をしやがんだテメェ!?



……です。
最初誰が言ったのか分からないくらいに崩れた言葉で、セシルだと気づいた瞬間痛快で笑っちゃうくらい最高でした。
そうそう、やっぱり人間本気で怒ったら大体こういう言葉遣いだよね!!
(読む10時間くらい前にこういう言葉遣いでキレた人←良くない)




まとめ





エインの討伐者としての成長、ジンの贖罪、セシルとライラの処遇。
2巻に向けての布石は十分で可能性はどれも無限大。
いやー楽しみですな!!



以上!




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