今日のラノベ!


絶対彼女作らせるガール

絶対彼女作らせるガール!

著者:
まほろ勇太

イラスト:
あやみ

レーベル:
MF文庫J


【あらすじ】

この学園には必勝の女神がいる―。白星絵馬の手のひらに願い事を書くと叶う、そんなジンクスといつも笑顔な人柄で学園でも人気のクラスの太陽・絵馬を尻目に、目立たず冴えない自称幽霊の大地は生徒会室へ。憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務のためだ。が、ある日大地が偶然絵馬の「とある秘密」に触れたことで、絵馬が大地の恋愛を全力応援すると宣言!さらに絵馬を信奉する学園トップ美少女の猪熊みりあと鷹見エレナまで巻き込んで大地のモテ改革を開始!!大地の学園生活は瞬く間に一変していき―!?第13回新人賞“優秀賞”の正統派青春ラブコメ、爽快に登場!




感想:★★★☆☆




MF文庫Jの新人賞にて優秀賞を受賞し、好きラノ2017下期で1位を獲得した注目作!
文章の質は文句なしに高いですが、それゆえに疑問符を浮かべた部分もあり何とも評価しづらいところ。



まず面白かった点。

1つは「憧れの先輩を振り向かせる」という目標がブレないシンプルなストーリー!
王道中の王道。
もはや使い古されたと言っても過言では無いとすら思える題材。
しかしだからこそ、「2017年のライトノベル」という潮流においては目立ったのでしょう。
1巻から複数のヒロインを出す、サービスシーンも作る、主人公はイマイチ煮え切らない態度、etc…。
これらが最早当たり前のように繰り返されている中、それらの大筋を踏襲しつつも「主人公(男)が一途である」というただ一点で勝負し、見事成立させていることが凄い。
私もいつもなら「エレナ様に足を置いていただきたい!」とか叫んでいたかもしれないですが、今作ではどうしても生徒会長という絶対的な最終ヒロインの存在に目を奪われてしまいます。
悔しいくらいに術中にはまってしまって、故に面白い。


もう1つは豆知識要素!
豆知識というか、がっつり学習として楽しめる情報量でした。
今回取り上げられていたのは、猪熊ちゃんが教えてくれる「ファッションについて」と、エレナ様が教えてくれる「円滑コミュニケーション術」の2つ。
どちらもですね、知っているんですよ。半分くらいは。
情報源はTVだったと記憶しているので、世間的には「常識」の範疇かもしれないところが半分。
「ファッションの流行は意図的に作られている」とかですね。
そして、もう半分が初耳学。
「服は機械による自動縫製ではない」とかです。

全く知らないジャンル・情報についてドヤ顔で披露されても「……(ふーん…)」くらいなものですが、既に少しでも知っている事についての新情報となると「……へぇー!!」くらいまでリアクションが変わるもの(だと思っています)。
常識とトリビアの比率をうまく考えて、興味を最大限惹かれるような情報量に。
それを意図的にやったのであろう文章・展開が、個人的には今作最もツボです!






さて、問題は冒頭で申し上げた「それゆえに疑問符を浮かべた」という点です。

この主人公くん、女の子の容姿をそれはもう細やかな点まで美しい例えをいくつも重ねて褒めちぎるんですよ……。
その描写で女の子の魅力はバッチリ伝わるんですが、如何せん事細かすぎるのだよ……。

ぶっちゃけ一言で言えば、読むのが辛かったです。
上で挙げた良いポイントが、それなりに読み進めてから把握できる類のものだっただけ余計に。
クラスメイトにすら名前を把握されず、特に目立った特技もなく、成績が優秀というわけでもなく、コミュニケーションがうまいというわけでもない人間が、普段からボーッとクラスを眺めているという経験のみであれだけの比喩を重ねて女の子を褒めちぎることができるなら、さっさとその気持ちを行動に移してほしい。
その観察能力がありながら、好きな先輩の違和感に気づけない?そんなことは無かろうて。

まぁ、この点に関してはこの作品に限った話でも無いですし、逆に淡白すぎる描写というのも困るので難しいところなのですが。
難しいところだからといって評価外にするわけでもないので、正直に★-2させていただきます……。

いや、本当に。
特に中盤以降この作品の面白さが分かってからは、面白さを求める気持ちと「……でもあの描写量が待っているんでしょう?」という気持ちの葛藤で、「どうしよう……どうしよう!」って読む手が止まりましたから。






残りはいつもの読書メモで!




読書メモ





12p:絵馬……えま……エマ……
⇒朝30pくらい読んでから出勤して、感想と今後の展開を考えながら仕事していたんですがね?
手越くんあたりが「おまえはわるい女」とか歌いそう、とか思ってしまったせいで仕事の手が止まりました(実話)



17p:修飾の嵐
⇒上に書いたとおり、女の子の容姿をこれでもかというくらい美しく描写していて、本当に描写だけは素晴らしいんですよ……!
その描写をしている主人公のキャラとの整合性に疑問を持ってしまう僕が悪いんですっ!
この描写を踏まえて「僕は至って平凡」とか言い出さなかったのは僥倖。



38p:「死」キーワード確定
⇒作中「女神スイッチ」として機能する、絵馬に対してのタブーワード「死にたい」。
明るい展開で騙した後に暗い展開にズドーンと持っていくタイプだと確信していましたが、そこまで深くズドーンと行かなかったのは精神衛生上は良かったです。
予測可能回避不可能な大きさの落とし穴に自ら突っ込んでいくのは楽しいですね!



42p:良い事言うのが早い!
⇒主人公くんに対して絵馬が語る言葉。とても良い。
辛い時、悲しい時の気持ちを的確に、されど重くなりすぎないように纏めてくれていて、「この子になら自分の悩みを相談したい」と素直に思える天使みがあります。
40pちょっとしか経ってないのに早くもクライマックス感あるシーンで、ここでコレ来るならラストはどんな良いシーンが……!とその後への期待値がグンと高まったシーンです。



81p:お前実はおしゃれできるやろ……!
⇒こうね、制服姿の猪熊ちゃんとかエレナ様の外見を描写するのはまだ分かるんですよ。まだ。
でもですよ?
「小さなリボンのあしらわれた繊細な白」とか服の感想込みで外見を描写されてしまうと、もう何も同感できなくなって……。



113~118p:瞬間火力
⇒このシーンの後、それまで読み渋っていたのが嘘のように気がついたら1冊読み終えていました。
それくらい火力あるシーン、「笑顔」。

主人公くんが初めて自分の意思を強く前面に出したことで今後の青春に期待が持て、それと同時に猪熊ちゃんやエレナ様がタダの絵馬の取り巻きに留まらない良キャラだということを知らしめられました。



188p:普通に考えたら父の部屋
⇒しかし、そんなことは無かった



207p:……デジャブ
「はは、さすがに無理だと思うな」

クラスの空気に一石を投じ、その一言が何故か教室に響き、クラスに馴染むきっかけになる。
読んでて本当にびっくりして鳥肌立ったんですが、「無理」という言葉も含め、これ僕が高校入学1日目にやらかしたのと同じなんですよ……!
会話の内容はもちろん違いますが(確か全校集会中にこのクラスのメンバーで黙ることができるかどうかとかそんな話)。

ろくに会話したことも無い、クラスという枠組みの中の不特定多数の人に否定の言葉を突きつける。
l怖いですよ。
失敗なんてしようもんなら……。
僕のは反射的に「いや、無理だろ」って出ちゃったのが良い方向に転がってくれただけなのでアレですが、コミュニケーション手段として、吟味した上で、自分の意思でこの一言からコミュニケーションをスタートしたというのはとても凄くて、感動すら覚えます。
いやぁ……、本当にびっくりしました。




まとめ





実は高校のクラスメイトが書いているとかそんなオチは……(無い)



終わってみればプロローグ。
それぞれのキャラが全く別々の方向に向けていた矢印が、主人公くんに向き始め、これからどんなラブコメが繰り広げられるのか期待に胸高まります!

絵馬の「女神スイッチ」、一瞬見せたその狂気の面が2巻でがっつり描写されることを期待しているのは僕だけかもしれませんが、それはともかくとして「人間は様々な側面を持ち、それぞれに信念を持ちながら生きている」ということを深く感じさせる良い物語だったと思います。
2巻でも彼女作らせるガール“たち”の、面白くも至極真面目なラブコメを見せてくれることを期待します!



……そして、最後まで主人公くんの名前を書くことは無かったのであった。


以上!




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