どもー。
デスカイザーです。


ファンタジア文庫30周年!
ってことで、今年は注目度を高めていきたいですね!
来月には…信奈の最終巻も……出ることですし…………。




ということで、
今日のラノベ!

織田信奈の野望 安土日記 2

織田信奈の野望

 安土日記2 小早川隆景の初恋

著者:
春日みかげ

イラスト:
みやま零

レーベル:
富士見ファンタジア文庫


【あらすじ】

時は第2次木津川口の合戦直前。織田家との決戦が迫るなか、記憶を失って、毛利家に拾われた相良良晴は…「よ、良晴。なんで自分の着替え中の部屋に!?」「まさか姉者と私を間違えたのではあるまいな?忍ぶなら私の方に…」両川姉妹に囲まれて、ドタバタな軍師生活を送っていた!?隆景に変装した元春にイチャつかれたり、隆景と2人きりで遭難したり、こども3人組や宇喜多に振り回されたり。勝利のための旅のなかで、距離が近くなる良晴と隆景のドキドキな恋と、騒がしくて楽しい毛利家の風景が、いま明らかに!11巻の裏側を描いた、良晴と隆景の船旅デート連作短編集!



感想:★★★★★



ファンは二度死ぬ。
表紙で一度、中身でもう一度。







全国版11巻の裏側、空白の半年間。
良晴が小早川隆景の恋人だった時の、甘く切ない日々を描いたストーリー。
ドラゴンマガジンで連載していたものに、加筆修正を加えたものですね。
ドラマガしっかり買ってはいるんですが、全くと言っていいほど読んでいないので初見です(なんで買ってるんでしょうね……)。




まずは表紙ですよ!
南蛮衣装に身を包んで「どう?」とばかりにこちらを見つめる小早川さん!
作中「巻ノ五」でマカオに行った際に小早川さんが身に付ける衣装だと思われますが……素晴らしいですよね?素晴らしいですね!
冷血の智将、無表情なキャラだった小早川さんが……微笑んでいる!
肩出し!フリフリ!ブレスレットにネックレス!
それでいて「一文字に三ツ星」をあしらえて!
帽子により顔半分が影になっているのも、ストーリーの重さを反映していて良いです。
作品公式Twitterで初めて見た時に確信しましたが、この表紙、間違いなく信奈シリーズでもトップ3に入る素晴らしさですよっ!!

デザイン面でもすごいのはもちろん、注目したいのは11巻との対比
この『安土日記 2』は11巻で描かれなかった空白を埋めるストーリーなんですが、そんな11巻の表紙はこちら。


織田信奈の野望 全国版 11

そう、感情表現薄めの女の子。
それでいて未来を悟り不安に駆られていることが伺える表情。
おそらくは第二次木津川口の戦いの直前あるいは開戦直後、乾坤一擲の作戦の成否を待つ姿であり、良晴の「かつての恋人」である信奈との戦いへの不安、良晴に対しての申し訳なさなんかが入り混じった表情でしょう。

そんな『全国版 11』の裏側で小早川さんが『安土日記 2』のこの表情をしていたこと。
半年間の船旅の最果ての地でこんなに楽しそうな表情を浮かべていたこと。



……僕はもうだめです!
小早川さんの悲恋に耐えられません!!!
あああああ・゜・(ノД`)・゜・あああああああ




並べることで二重に苦しい『全国版 11』と『安土日記 2』。
読み返したら追い死ぬことが予想されるので……間を空けます(読むには読む)





物語はというと、良晴と小早川さんが桃色の空気を醸し出しつつ、周りはそれを温かく見守り、ときにはちょっかいを出して照れさせつつ、遭難するようなお話です。

うん、めっちゃ遭難してますね。
博多湾から長崎へ向かう途中で難破して、流れ着いたのが沖縄本島にほど近い久高島。
冷静に考えるまでもなく死亡案件です本当にありがとうございました。
でもその漂流している間、ずっと小早川さんに抱きつかれていたというわけですから良晴は役得というか、ちょっとレポート用紙10枚くらい感想を書いて直送ください
……代われとは言わないから。



先程も書いたとおりドラゴンマガジン上にて連載されていたものということもあり、既刊『邪気眼竜政宗』に比べてコメディ寄りです。
あとで読書メモコーナーでもいくつか触れますがパロディや現代ネタが結構あります。
なので『全国版』関ヶ原編まで読んでいる身としては、この後小早川さんを待ち受けているまさに身を引き裂かれるような事態をどうしても思い浮かべてしまい違和感を覚えることもありました。正直。

でも……それも計算のうちなんでしょう。
なんてことない恋をする女の子が、合戦に身を投じ、「天下か、恋か」の二択を迫られる。
まさに『織田信奈の野望』シリーズの原点とも言うべき姿なんです、これは。

本来違和感をもって捉えられるべきことを平然と実現しようとしてきた信奈の強さを再確認させられ、常に「2つの実(すべての実)を拾う」と豪語し続けてきた良晴の常人離れした執念に気づかされ、冷血の智将として名を馳せる小早川さんの“普通さ”を示す。
そんなお話。
姫武将の皆が皆、信奈のように強いわけじゃないんだということ。
全国版で言うなら、宗麟ちゃんや謙信も「強さと弱さ」を兼ね備えた姫武将として描かれていましたが、この巻によって小早川さんも姫武将であると同時に普通の女の子なんだと実感させられました。




以下読書メモ!



読書メモ




~60p:甘酸っぱぁい
⇒全体的に甘酸っぱい空気に満ち溢れていますが、良晴の記憶に関してや小早川さんの兄・毛利隆元についてなどの「少し重い話」が軍議の場以外でほぼ無いので、あまり心配することなくラブラブぶりを見守れました。

智将・小早川隆景として『全国版』で見せていた姿と、1人の女の子として『安土日記 2』で見せている姿は全然違う姿。
姫武将として、毛利を預かる身として色恋は二の次で国のこと民のことを考えるのは当然という本人の弁も当然であり、「隆景は良晴に対してもっと素直にせい!」という元春の心配もまた当然であり……。
そんな葛藤をしつつも好きな人に好きと言ってもらえることを恥ずかしくも嬉しく思う小早川さんの純真乙女ぶりに全読者は討ち死にするのもまた当然。



66p:ガスパール、ザビエル説。
⇒よく考えると、もしガスパールが良晴の二周目なのだとしたら脳裏に残る言葉は「ジパングのオダノブナ」ではなく「ニホンのオダノブナ」になるのでは?という素朴な疑問。
そしてザビエルに顔が似ていて信奈を助けたいという気持ちがあることを素直に受け取ると、ザビエル説が浮上してくるんですよね……。
関ヶ原を乗り越えた今となっては些事ですが、ここまで来たら綺麗に正体が判明してほしいですね。



73p:いったい誰なのだこの男は。
⇒宇喜多直家、豹変。
全国版で急に露璃魂と化した直家が最初に本格的におかしくなった記念すべきポイント……?



78p:ニライカナイ
⇒章タイトル「小早川さんのニライカナイ」より。
作中124pでは「常世」「死者の世界」、ネットで調べたところでざっくりまとめると「神の世界」。
いずれにせよ迷うべきでないところに迷い込んでしまったわけですね……。



82p:渡辺綱
⇒遭難していた吉川元春らのもとに現れた北九州の海賊・松浦党。
その主・松浦隆信の先祖として名前が出ていた渡辺綱、どこかで聞いたことがあると思ったら頼光四天王筆頭の人でした!
wikiにもチラッと書いてありますね。
こういうのを見ると、歴史は繋がっているんだなぁと実感しますし面白いです。



98p:沖田畷への布石
⇒良晴の結んだ縁がまたひとつ



107p:男はつらいよ
⇒ハブに噛まれて死んで終わるドラマだったんですね……。
良晴の父じゃなくてもトラウマになるでしょうよそりゃ(笑)
でもこのラストに抗議が集まり、結果不朽の名作として映画が何本も作られることになったのだから分からないものですね~。
…………いや、これを伏線に20巻で良晴があっさり死ぬとかやめてくださいよ?



107p:う、ううう……だ、抱っこ
⇒ズッキュウゥゥン……(←ハートを撃ち抜かれる音)
…………(←サラサラと灰となり散りゆく様)

小早川さん……子供っぽくなるのは……卑怯です……(あまりの可愛さに目を覆う)



134p:口噛み酒
⇒16pの「私と良晴とには前前前世からの縁があると信じていたが 」に加えてのこれ。
ウンサクという琉球に伝わる米を発酵させて作る米は実在していて、実際に口噛み酒の要領で作られていた記録も残されてるようですが、まぁ『君の名は。』ですよねー!!
時を越えて出会った男女、常世と現世の狭間の世界、逢魔が時…。
他の要素的にも間違いないですね(笑)

例えば美濃の岐阜城で信奈と良晴がそれっぽいことしていたら作品の空気との整合性が取れず萎えていたかもしれませんが、琉球で、しかも琉球の記録に沿った形でやられたら「『信奈』だ!」ってなるから不思議です。
拍手!



147p:椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)
⇒シナリオ滝沢馬琴、イラスト葛飾北斎による江戸時代のライトノベル。
そう言われるとすごい作品に思えてくる……



185p:かくして
⇒表紙の南蛮服小早川さんの出来上がりである。
旅の最果て、これが終われば戦に戻るということを理解しているからこそ、こういう表情で生き生きしているのかな?と。
小早川さんにこういう表情を見せる相手が出来たことは嬉しいですが、それが叶わない恋、あるいは道険しい恋であることは間違いないわけで、そう考えると喜びの一枚が悲しみの一枚にも見えてきます。



197p:ロペスやらメッセンジャーやら……
⇒段々ネタが自由になっていくんですよねー!!
このあたりの寛容さは、Twitter上での「真田丸」SSや季節SSでの自由奔放さの名残なんでしょうか?



200p:「その時
⇒良晴が小早川さんを取るか、日ノ本の未来を取るかの二択を迫られた時。
小早川さん。
その時、あなたは、躊躇うよ。
その選択を、あなたの大好きな良晴が、押し付けるとでも思う?



209p:うどん国
⇒ネタに容赦が無い
それでいて本編の重要な伏線を回収しているという。
いやまさか本編完結直前のこのタイミングで、松永弾正と対立して京の都を追い出され、アニメでも微妙な尺しか登場していなかった三好三人衆の行方が判明するとは!!
あのあたりのストーリーで一番気がかりだったので、一安心です。



242p:やっさ踊り
⇒気になって調べてみたら実在してました。
小早川隆景が三原の地に海城を築いた際の祝いが起源、という説についてもう少し詳しく知りたい!という方は三原市HP「三原やっさ祭り」についてのページにありますのでどうぞ。



267p:現代
⇒良晴の両親、初登場です!
良晴の空想のようでいて、もしかしたら琉球での常世の残り香のようなものだったのかもしれません。
信奈のもとに戻ることになるのか、小早川さんのもとで暮らすのか。
その選択肢の中に「現代に戻る」が含まれていないことに、また10巻・天岩戸開きの際に現代に帰る選択を自ら放ったことに対しての良晴の罪悪感なのかも。

いずれにせよ、「夢を現実にすること」「夢だからこそ価値があること」を自分の経験を元に息子に語る良晴父の言葉は胸に沁みます。
家族との望まぬ対立を数多く扱ってきたこのシリーズだからこそ、改めて提示された現代の価値観に眩しさを感じるのかもしれませんね。




まとめ




そして、物語は11巻に戻る。

小早川さんが幾度も言っているように、この『安土日記 2』は夢物語です。
叶わぬ恋が、現れないと思っていた殿方が現れ自分だけを見てくれる、そんな夢。

夢に価値があるとしても、夢を夢として終わらせてほしくないと思うのは傲慢でしょうか?
そうは思いません、いや、思いたくありません。


信奈と小早川さん。
どちらにとっても良い未来を。
どうか、20巻でそんな“夢”が“現実”となりますように。





以上!



スポンサードリンク