どもー。
デスカイザーです。


雪すごかった@神奈川西部
寒くて震えて困ったそんな時は、しょうが紅茶飲みながらの読書ですよ!
ぽかぽか!




ラノベ!今日の!(倒置法)


無彩限のファントム・ワールド

無彩限のファントム・ワールド

著者:
秦野宗一郎

イラスト:
しらび

レーベル:
KAエスマ文庫


【あらすじ】

人間の脳機能に変異が生じた近未来。人は幽霊や妖怪の類を認識できるようになり、それらを「ファントム」と呼ぶようになった―――。  ホセア学院の高校1年生、一条晴彦はファントムに対抗しうる特殊能力をもち「五行の氣」で戦う先輩の川神舞、『ファントム・イーター』と呼ばれる能力をもつ和泉玲奈、ファントムと孤独に戦う水無瀬小糸と共に苦しくも楽しい〈煩悩溢れる〉学園生活を送っていた。  そしてある事件をきっかけに彼らはこの世界の真実を知ってしまう―――。 《第四回京都アニメーション大賞小説部門奨励賞受賞作!!》 衒学的知識と残念な煩悩が世界を巻き込む学園ファンタジー開幕!!




感想:★★★☆☆

KAエスマ文庫の作品は初ですね!
電撃文庫なんかと同じ17×43文字なんだけど、フォントが大きい分空白が少なくて圧迫感ありました。
読書慣れしてなかったらこれだけで読むの諦めそうな…?



良かったと思う所!
ベクトルの違う魅力があるキャラ
・章ごとにテーマの違う主人公・晴彦の披露する知識
・何気ない晴彦の危うさ
・京アニ感溢れるセリフ回し


1つ目と4つ目は連動しますね。
京アニ作品を見てる時、一番特徴的だと思うのは主人公の叫びツッコミです。
特にわかりやすい例だと『境界の彼方』とか『甘城ブリリアントパーク』とかですね。
主人公が「自分の中で信念を持つ」ことに共通していて、それをヒロインたちに突っつかれることに対してツッコミを入れ、勢いを出したり、あるいはその直後に空白を挟んでひとつのバカっぽさを演出していたりするのが私の好きな京アニ作品の特徴だと思います。

今作も自身の持つ能力への”可能性”だったり思春期のリビドー的なものだったりとヒロインたちからは白い目で見られがちですが、概ねその特徴に当てはまっていたと思います。
私はそういう”間”が作るFunnyな笑いが好きなので良かったですが、人によっては「何言ってるんだ…?」な空気になることこともあるので……不特定多数の人におすすめはできない作品かもしれないです…。


最初はショートスパッツを履いていた舞先輩が、晴彦の微々たる活躍に心動かされたのか途中からショートスパッツを履いていなかったのが印象的です。
小糸の晴彦への急接近もそうですが、今作はとにかくキャラの内面がはっきりとは描かれていません!
いや、描かれているんですが!(どっちやねん!)
「9割方こう思っている」という確信に近い推測で止まるんですね。
なので、唯一ほぼしっかり描かれている玲奈に比べて、舞先輩や小糸は1割の遊びの部分がより魅力的に写っていたように思います。



2つ目は、私の大好きな雑学タイム!!
「全生活史健忘」や「シュレーディンガーの猫」みたいに普通に生きていれば耳にするレベル(かもしれない)レベルから、「フット・イン・ザ・ドアテクニック」や「タコ 観察学習」、「自己拡大型の褒め言葉」のようにやや専門的な方面まで、結構詳しく書いてあります。
……こう見ると社会心理学で扱う内容に偏っていますねー。
印象に残ったものを挙げただけで、他にも哲学や物理学もあったはずですし、小糸の辛辣な名言ツッコミという新ジャンルなツッコミでは「ルビコン川を渡る」のように(恥ずかしながら)初めて意味を知るワードもチラホラあって、とってもタメになりました!
(買って)きた!見た!勝った!


3つ目は……今に思えば伏線だったのかな。
1・4つ目についてで書いたように賑やかな会話が続き、いかにも何の悩みも無さそうな主人公だと思っていたのに、一人暮らしの家に戻った彼がやっていたのはひたすらに本を読み、ひたすらに絵を描くこと。
それは「戦闘では役立たずな自分の価値を少しでも高めるため」。
余りにも痛々しい動機に見えたのは、やっぱり昼間の彼のテンションとの差でしょうか…。

いや、最初は「こいつ、裏ではしっかりやるタイプなんだな!偉い!」と思って読んでいたのですが、その描写が2回3回と繰り返されると次第に狂気じみたものを感じるようになりまして…。
夏休みも始まるかどうかという時期には寝不足でぶっ倒れそうになっていましたが、普通に考えて春先にも関わらず窓の外が白むまで知識を蓄え遅刻せず学校に通う生活を何ヶ月も続けられるわけがない!!
「いや、俺はやってるけど…」というあなたは凄い!!

そしてその異常な耐久と記憶力は、実は晴彦は人では無かったという結末へ。



ん~?と思った所!
・晴彦の覚醒
・語尾の揺らぎ


その結末を受け入れるのに時間がかかったのが正直なところ。
『無彩限のファントム・ワールド』というタイトルの通りに、この作品の恐らくメインのメッセージである部分は「この世は人の脳が生み出した、彩りに限りの無い幻想の世界なんだ」というところだと思います。
それがまさか晴彦が人間じゃないとなってしまうと……!
確かに脳が生んだ存在ではあるんだけど、舞先輩たちの異能という幻想とはまたベクトルの違う話じゃないですか!!

その後の戦闘含め、それまでの章とは物語そのものが変わってしまったかのような急展開。
「物語の抑揚」とも「ストーリーの荒れ」とも取れますが……私が読んだ時に抱いたのは正直後者でした。



語尾の揺らぎは読んで字の如くですね。
特に舞先輩なんですが、急激に凛々しい発言をなさることが何箇所か…。
特に83pの「バカ彦!絵を『描く』準備をしなっ!」が特に気になってしまって…。
細かいことですよ?すっごい細かいことですが、舞先輩ならいくらバカ彦と呼んでも「準備をしなっ!」ではなく「準備をしなさい!」って言うと思ったので。
でもこういう違和感の積み重ねが作品全体への不信感にも繋がっていきますからね…。




ストーリー全体としては、晴彦を取り巻く生まれの秘密に関わる諸々の情報だったり、舞先輩や小糸のもう少し踏み込んだ話なんかが今後気になるところ!
アニメが2巻のストーリーを扱っていない場合冬コミで扱う作品優先になるので読むのは先になりますが、なんとか年度内には2巻を読めたら良いなぁ、とは思っています!




以上!


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秦野宗一郎
京都アニメーション
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