感想テーマは 「思ったことを、そのままに!」
ネタバレを含みます ご注意ください

今日のラノベ!

はぐるまどらいぶ。


はぐるまどらいぶ。

著者:
かばやきだれ

イラスト:
杉浩太郎

レーベル:
オーバーラップノベルス


【あらすじ】

 アンティ・キティラ!15歳の誕生日です!!魔法の使えない、食堂の看板娘だったんだけど!魔無しにとって最後の砦、能力おろしで得たスキルは――は、“歯車法”!?なんじゃそりゃぁああ!?“金の歯車”しか、出せないスキルって!?一度は落ち込んじゃった金の髪の看板娘。でも、両親に超励まされ!冒険者、目指そうって、決っめまっしたぁぁあああ――!!
 ……ん?なんだ?この王冠みたいな歯車?
『――クラウンギアによる:髪型分析完了。
 ――“ツインテール”へ移行します。』
「しゃ……しゃべったッッ!?」
 突如現れた王冠っぽい歯車“クラウンギア”と、黄金の髪と瞳の少女“アンティ”が織り成す、どこにもない、ここだけの“物語”――!!
 アンティの、アンティだけの冒険が今、始まる!





感想:★★★★★




「好きラノ」2018年上期1位に納得!
投票期間中に読んでたら間違いなく投票してましたねこれは!!!






いわゆる「変な魔法しか使えない縛りで冒険してみる」系の1つ。

今作では歯車縛り。
ということで、そもそも歯車とはというところから入ってみましょう。


1.「歯車とは、伝道車の周囲に歯形を付けて確実な動力伝達を可能にした機械要素である」
2.「減速や増速、回転軸の向きや回転方向を変えたり、動力の分割などに用いる」
3.「歯数の組み合わせは自由であるが、大きな力を伝達するときや、滑らかさを必要とするときは、いつも同じ歯同士が当たると、微小な傷が大きくなったり、特定の箇所で音が発生するため、歯数が互いに素になるように設計される場合がある」
4.「冠歯車(クラウンギヤ):冠歯車はかさ歯車の一種で歯が回転軸に対し垂直につけられたもの。歯の形状が王冠に似ている」
5.「歯車の歴史は古く、1901年に地中海に沈んでいた古代ギリシア次代のアンティキティラの沈没船から回収されたアンティキティラ島の機械は紀元前150-100年に製作されたと考えられているが、これは天体運行計算機だった」
1~5:Wikipedia「歯車」より引用



1と2は歯車の概要ですね。
歯形を噛み合わせることで確実に動力を伝えることができる、というのが歯車の特徴にして最大の持ち味。
大きさや種類、組み合わせる向きを変えることでその伝達方向・伝達動力の向きはいくらでも変えることができるので、使い方は千差万別
最も身近な歯車の使用例と言えば、やはり時計でしょう。
動力と歯車だけで暦を正確に刻んでいるんですから、あれ冷静に考えるまでもなく凄いですよ……


3は今回Wiki見てて「ほぉ~」と思ったので引っ張ってきました。
ただでさえ複雑なのに、こうした耐久性まで考えて設計されているんですね……!


4と5は今作の名称に関わる部分。
主人公アンティ・キティラちゃんの名前の由来は、そのものズバリ、アンティキティラ島ですね。
パズドラにもそんなの居たな!懐かしい!
この島の機械と同じ精巧さを持つ機械はその後1000年現れなかったというんですから、立派なオーパーツですよ……
そんなキティラちゃんの相棒にして頭の上で常にクルクル回っているのがクラウンギアで、元ネタはこれまたズバリ、冠歯車(クラウンギヤ)ですね。
かさ歯車自体は自動車の駆動軸部分に用いられているのがメジャーな例らしいですが、クラウンギヤの使用例はなかなか見つからないです……






では作品の感想へ。


たかが歯車、されど歯車。
主に上記2の使用用途を見ていただければ一目瞭然なんですが、こと運動が関わる分野において歯車ってぶっちゃけほぼ何でもできるんですよね。
例えば作中にもあった「落下する勢いを歯車を噛み合わせることで相殺する」という荒業だって、現実でもやろうと思えばできるはずなんです。
落下しながら噛み合わせるという天文学的緻密さと、歯車そのもののスケール、噛み合って遠心力で振り回される間の脱臼その他の条件をクリアしてしまえば。

つまりですよ。
フィクションであれば、これほど無理なく万能な機構は他に無いと言っても過言ではないでしょう!
そんな万能機構にさらに「他アイテムとの結合」「空中への固定」というチートまで加えているんですから、もう何も怖くない!!


ということで魅力その1・歯車の使い方がアクロバティックで面白い!でした。











食堂の看板娘とは、何故こうも我々の心を揺さぶってくるのだろうか?

皆の胃を司っているということは、皆の命を一番想っているということ。
時に快活に、時に厳しく。
活力を漲らせる助けとなり、清く生きるための道しるべとなる存在。
それが、看板娘……!


と、そこまで壮大な話ではないかもしれませんが、今作の舞台のような村の食堂ともなれば警備隊の次に多くの人と関わる仕事ですからね。
ひとりひとりへの思い入れも当然強く、故に守りたいという気持ちもひと一倍強くなるものでしょう。
その気持ち一つでクマに立ち向かうキティラちゃんの立ち姿がとても凛々しく、美しかったです!

また、常日頃から看板娘として接客しているからか感情表現が大きいのもキティラちゃんの特徴ですね。
冒頭30pほどで既に1作品読みきったくらいの感動があったのは、彼女の失望と涙と再起が大きく描かれていたらからでしょう。
もちろん彼女の両親の反応も込み込みでの感動でしたが!!
そんなハイスピード感動作品が300pもあるんですから、満足度はお察しいただけるかと思います。
本当にもう痺れました……!
90pのキティラちゃんのなりふり構わない叫びとか、最高です……!


ということで魅力その2・キティラちゃんの感情が生き生きしている!でした。





以下、も少し詳細な感想を読書メモにて。





読書メモ




15p:ぎゅういいいいいいいいん
⇒良いなぁ……
この空白の使い方と、効果音で無理やり状況を分からせる手法良いなぁ……
ココも含めて、ところどころ漫画っぽさを取り入れて視覚的に楽しませてくれるのも、この本の面白さの1つだと思います。
WEBから確実にアップデートして書籍にしているのは素晴らしい!



27p・29p:両親
⇒上述の感動シーン
後々出てくるキティラちゃんの他者への人情は、この両親から確かに受け継いだものなんですよ。尊い。



90p:剣幕
⇒自分より小さいからと遠慮せず、怒りと焦りのままに叫ぶキティラちゃん。
1冊通して一番好きなシーンですね!
なんとなく頭の中では『フェアリーテイル』の絵柄で再生されていました。



259p:我が家
⇒この両親、出てくる度に名シーンを放り込んできますね……
まったくもう……!





まとめ




ここまで書いて気づいたんですが、あと40pくらい読んでませんでした……
しおり使わずに読んでいたので今の今まで全然気がつきませんでした……
びっくりですよ……

ま、まぁ残りはこのあとすぐ読むとして。



ダイレクトに表現される感情と、三次元に繰り広げられる歯車戦法、そして視覚的にも楽しめる文章と、どこを取っても魅力しかなくとっても面白かったです!
とても緻密に描かれた少年漫画のような、熱さと繊細さを兼ね備えた作品でした。

次巻にも期待です!


以上!




今日のラノベ!



高崎グラフィティ

高崎グラフィティ。

著者:
古宮九時

イラスト:
とろっち

レーベル:
メディアワークス文庫


【あらすじ】

 故郷を捨てれば、私たちは強くなれるでしょうか――。
 東京まで新幹線で約一時間。不自由はなく、あえて越える必要のない“一時間の境界線”に囲まれた街、高崎。地元に閉塞感を覚える美紀は、専門学校に通うため上京する日を控えていた。しかし高校卒業の日、父親が入学金未納のまま突然失踪。優斗ら幼馴染四人と共に父親捜しを始めるが、彼らにも秘密があって……。
 第1回未完成映画予告編大賞グランプリ受賞。将来、恋、家族に悩む若者を痛切に描く、話題の感動作を小説化!





感想:★★★★★




どもー!
デスカイザーです!

という自己主張から始めまして。
待ちに待っていた古宮九時先生の新作です!
しかも、第1回未完成映画予告編大賞グランプリ受賞作を基に制作された映画のノベライズ!

8/18から高崎で先行上映、8/25から全国で公開です!!
映画公式サイトはこちら




※未完成映画予告編大賞とは……「ある地域(任意のエリア)を舞台にした「3分以内の予告編映像」」を制作・エントリーして競われる映像コンテスト。未完成映画予告編大賞公式HPより引用




高校を卒業した日から入学・入社するまでの僅かな期間。
何者でもなく何者にもなる可能性を持った5人の少年少女が、夢を見て現実を見て、そして改めて自らの夢を再確認していく物語。


5人それぞれ抱えている事情は全く違うんですが、しかし「将来について行き詰まっている」という点では共通します。
高校を卒業した解放感と、広大な世界に放り出された孤独感が綯交ぜになった感覚。
故に、それまで集まったことのない5人がそれぞれに親身になり、それぞれの想いに触れ、怒り、励まし。
高校という青春の終わり、そして新しい世界の始まりに輝く彼女らの姿は明けの明星のようで。
面白かったです!!






「こんな青春してみたかった」と言うにはそれぞれの事情が重いんですが(汗)、不思議と共感している自分もいます。
『純真を歌え、トラヴィアータ』でも感じた、覚えがないのに経験したことがあると確信するあの感覚ですね。
なんでしょう……?んー、でもやっぱり少し違いますね……
『トラヴィアータ』は走っている途中に限界を感じて歩いたけど再び走り出す話で、『グラフィティ』は走り続けているんだけど目的地が(何なら次の一歩でさえも)分からない話、みたいな。






事情の重さに付随して、締めはやや強引というか「このあとどうするの!?」的な部分はあります。
優斗とか絶対ヤバいじゃないですか……
あと美紀の父も……
いや、マジで優斗は真っ先に高崎出るべきですって……!
1時間の境界線とか家業とか気にしている場合じゃないですって……!!





タイトルの「。」がエモいです。
5人にとって高校生活の終わりであり、美紀たち東京へ行く組にとってはこの輝かしい2日間が高崎での(ひとまずは)最後の思い出となり。
文が終わるということは、次の文の始まりがあるということであり。
なんか、そういうことですよ。うん。






読書メモ





8p:白い観音像
⇒そういえば市役所裏から烏川挟んでの山の上に観音像ありましたねー!
地元……というほど近くはないですが、大船観音も山の上の白い観音様なのでそういう文化なのかな?と思った記憶があります。



15p:脱字?
⇒6行目「ってか、東京行くと美紀すごいねー
一瞬方言かと思いましたが「か」抜けっぽいですね。



24p:満開の桜
⇒ほんと高崎市役所裏の桜、すごい綺麗だったんですよー!




102p:知らなかったこと
⇒卒業しそれぞれの道を歩もうとする今だからこそ知れたことなのか、それとも自分が知ろうとしなかったから知らなかったことなのか、あるいはその両方か。
しかし、形や大きさは違えど胸に抱えていた空虚さは同じ。

この空虚さがこの作品の1つの軸ですね。
例えば美紀は、高崎で一生を終える生活に漠然と感じる空虚さを変えることと、服飾に関わる仕事という夢が合わさり東京へ向かうことを決意。
直樹は、自分が何も持たない空虚な人間だと自覚しているからこそ、お調子者というピエロ役を演じてクラスに溶け込む。
他の3人もまたそれぞれの空虚さを抱えていて、いや、多分作中の他のキャラやもしかしたら私たちも日々こうした空虚さを持っていて、それを埋めるために趣味なり夢なりに逃げているのかもしれません。
……なんか無駄に思考が深い。



103p:水切り
⇒大雨の後とかでなければ、土手から川面ギリギリまで下りることができます。
そう、私も旅行中に川まで下りました!
そしてテンションのままに水切りして……人生初のぎっくり腰ですよ……



110p:表紙のシーン!
⇒こういう演出あると疾走感のある青春!って感じがします!!
フィーリングです。



まとめ




最後にもう1つ。







あとがきに名前が載ってます!!!
「デスカイザー様」って!!!







経緯!
3月末に友人2人と高崎に小旅行していたんですよ。
で、「高崎なうー!」みたいなツイートを呟いていたら、古宮先生から「高崎の写真たくさんください」とご連絡をいただきまして。
そもそもノープランの旅行だったので、駅の写真撮ったり、大通り沿いに歩いてみたり、市役所の裏の桜と川を眺めたり。
そんな道中の写真を送りまくっていたら……これですよ……!
Twitterってすごい……

もし高校卒業直後の自分に声を掛けられるなら、
「将来あとがきに名前載るから、今のうちにHN変えとけ」
って伝えたいです……
多分言われても当時の私なら変えないですけど……




貴重な経験、ありがとうございました!





そんな経緯があっての読書だったので、そりゃ面白いに決まってます。
面白いに決まってますが、この経緯が無かったとしても同じ言葉を発していたであろうことは想像に難くないですね!
感情を揺さぶられ、考えさせられ、ドキドキして!!
すごく良かったです!!!


……徹夜明けで読んでいたので、今度もう1回じっくり読み返してみようと思います。




以上!




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